こむら返りについて
三上 将
(苫小牧市医師会・光洋いきいきクリニック)
三上 将
(苫小牧市医師会・光洋いきいきクリニック)
整形外科外来診療を行っていると、「こむら返り」が起こった、「こむら返り」に困っている、という相談をとても多く受けます。
まず、「こむら返り」とは何か?筋肉が自分の意思とは関係なく異常に収縮して、痛みを伴い、なかなか戻らない状態を言います(医学的には「有痛性筋痙攣」といいますが、基本的には病気ではありません。)。ふくらはぎに多く起こりますが、太ももや足の裏、指など様々な部位に起こります。就寝中や運動中によく起こり、中高齢者やスポーツ選手に多く発生します。原因は分かっていませんが、以下の関与が考えられています。「筋肉の疲労(疲労物質の蓄積)」、「筋力の低下」、「血行不良」、「水分、ミネラル、ビタミンの不足」、「身体の冷え」などです。
例えば、高齢者で就寝中にこむら返りが起きやすいのは、①加齢により筋力が低下していて、疲労物質が蓄積しやすいこと、②就寝中は身体を動かさないので、心拍数が減り血行不良となっていること、③寝汗をかいて、水分不足やミネラルのバランスが乱れること、④明け方や冬などは、身体が冷えて、筋肉がこわばること、などが背景となり、たまたま寝返りなどで筋肉に刺激が加わると、筋肉の細胞が暴走して異常な収縮が起こると考えられています。
では、「こむら返り」を予防する方法は何でしょうか?①寝る前に、ストレッチをして筋肉を伸ばしておくこと、②経口補水液を飲み、脱水やミネラルの異常を防ぐこと、③タイツなどで足の保温をすること、④身体の動きを制御されないように重い掛け布団は使用しないこと、⑤入浴はシャワーではなく湯船に入り、ふくらはぎなどをマッサージすること、などがあげられます。
さらに、「こむら返り」が起こった時はどうすればよいのでしょうか?①患部をさすったり、筋肉を伸ばすようにストレッチをすること、②症状が治まったら、少しずつ立ち上がったり、ゆっくり歩くなど優しく動くこと、③患部を蒸しタオルなどで温めたりすること、などが再発を防ぎます。
夜間の「こむら返り」は、50歳以上の人のほぼ全員が一度は経験すると言われています。治療薬として、「芍薬甘草湯」という漢方薬が有効です。頻回に「こむら返り」を起こす場合には、他の疾患が隠れている可能性もあり、是非一度、整形外科などの医療機関を受診することをお奨めします。
2023年09月26日 苫小牧民報 掲載