ロボット手術をご存知ですか?
田口 圭介
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
田口 圭介
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
手術という治療に対し、「痛い」、「大きなキズ跡が残る」、「長期入院が必要」といったあまり良い印象をお持ちでない方も多いのではないでしょうか。
手術の歴史は、全身麻酔の進歩に伴い19世紀後半に、お腹を大きく開けて行う開腹手術の基本方法が確立しました。しかし、患者さんの傷の痛みや回復までの期間を少しでも改善するために、1990年代には、お腹に小さな穴を数カ所開け、そこからビデオカメラのついた内視鏡や鉗子(内臓などをつかむピンセットのような器具)などを挿入して行なう腹腔鏡・胸腔鏡手術が行われるようになりました。その腹腔鏡手術をさらに進化させ、ロボットに手術を行わせるように開発されたのが「ダ・ヴィンチ」という手術用ロボットです。
このロボットには、4本のアームがあり、術者の腕・手・指そして目の代わりをしてくれます。そのため、執刀医は、これまでのように患者さんの前に立つことはなく、少し離れた場所で双眼鏡のようなテレビモニターに映し出されるお腹の中の映像を見ながらロボットを操作します。その体内の様子は、3D(立体)化されているため、あたかも自分がヒトの体の中に入っているかのような錯覚を起こすほどリアリティーがあります。また、映像を無段階に拡大することも可能ですので、開腹手術では見逃してしまうような細い血管も確認でき、出血量の減少につながります。さらに、ロボットの鉗子には、ヒトの手首以上に自由度の高い関節機能を有しているうえ、手振れ補正機能もついているので、非常に緻密で正確な手術が可能となります。
これまで、東胆振医療圏(苫小牧市、白老町、むかわ町、厚真町、安平町)には、この手術用ロボットを導入した病院はなく、患者さんには札幌の病院までこの手術を受けに行っていただいていました。しかし、この10月より王子総合病院、ならびに苫小牧市立病院で前立腺がんの患者さんを対象としてロボット手術を受けていただくことができるようになりました。
今後は、さらに他の領域においてもロボット手術が行われることが期待されます。
2019年10月16日 苫小牧民報 掲載