肥満と病気
小西 康平
(苫小牧市医師会・苫小牧日翔病院)
小西 康平
(苫小牧市医師会・苫小牧日翔病院)
今回、肥満と病気に関する話をさせて頂きます。
1.肥満とは何か
体重(kg)÷身長(m)²によって算出された数値が25以上であるときに肥満状態とされます。
さらに肥満状態に肥満が原因と思われる健康障害(高血圧や高脂血症など)を有する又は腹部CT検査で確実な内臓脂肪の蓄積を認める場合は肥満症と診断され減量治療や健康障害に対する加療を要します。
わが国では食事の欧米化や交通機関の発達による運動不足などの原因により男性で1300万人、女性で1000万人が肥満状態にあるとの統計が出ており、今後もさらに増加する事が予測されます。
2.肥満とメタボリックシンドローム
さて肥満というと、まず頭に浮かぶのはメタボリックシンドロームですが、その診断基準はウエストのサイズが男性で85cm以上、女性で90cm以上というのを必須項目とし、そこに①高血糖(空腹時血糖>110mg/dl)、②高脂血症(中性脂肪>150mg/dlかつ善玉コレステロール<40mg/dl)及び③高血圧(収縮期血圧>130mmHgかつ拡張器血圧>85mmHg)の①~③を2項目以上満たしている事となっております。
メタボリックシンドロームの状態が長期間持続すると動脈硬化が進行しやすくなり心筋梗塞や脳梗塞などの原因となるため早い段階で食事、運動療法による原料を図る必要があります。
3.肥満と癌
肥満と癌に何の関係が?と思われるかもしれませんが世界癌研究基金(WCRF)のデータベースによると消化器癌の殆どに肥満が癌発生リスクのひとつであるとされ、大腸癌は肥満を改善させることで確実にリスクを減らせるとされています。
ではどのような作用で肥満が癌のリスクになるでしょう。
まず肥満状態では脂肪細胞が大きくなることで組織の血流低下を起こし細胞に障害が発生します。そうなると軽度の炎症が持続的に維持され更に脂肪細胞からアディポサイトカインと呼ばれる化学物質群が分泌されます。
その化学物質の殆どは正常な細胞に対し発癌を促すような作用を持っており、これによって癌発症のリスクが高まるとされています。
4.肥満は万病の元
以上の様に肥満は数多の病気の原因となりうる状態です。健康診断などでメタボリックシンドロームの指摘を受けた際は、まだ若いから大丈夫、痛いわけでもないから平気などと思わずに減量に励んで頂けますと幸いです。
2019年09月11日 苫小牧民報 掲載