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Medical column とまこまい医報

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不眠症治療について

不眠症治療について

中島 幸治

(苫小牧市医師会・)

はじめまして、苫小牧市医師会の中島幸治です。
最新の精神科疾患や治療のお話をすべきとは思いますが、あえて、昔からある不眠症について記載させて頂きます。
さて、なぜこれを取り上げたかというと、最近、睡眠薬等の適正使用に力が入れられています。
皆さまの想像通り、多くの睡眠薬は依存性と耐性を持っています。
国の基準で決められている量でも、常用量依存という依存を生じさせる事があります。
薬の注意書きに「漫然と使用を続けるべきではない」ことが記載されていても、多くの臨床の場では適切に計画を持って使用されていることは少ないと思います。
諸外国と比較して、1人の患者さんに時間をかけることが困難な本邦の医療事情においては、致し方ないとも思いますが、臨床医としては何とかできないものかと悩んでおります。
皆さまに理解してもらいたい事は、不眠症の治療は、まずは睡眠衛生指導で、治療目標は「日中の不調の改善」です。
もちろん、何らかの精神疾患や原因薬物によるような不眠に対しての対応は異なります。
睡眠衛生指導については色々ありますが、まず理解して頂きたいのは、「早寝早起き」ではなく、「早起き早寝」ということです。
朝起きて光を浴びると、脳内の時計がリセットされ、その14から16時間後、次第に脳内での眠りを誘う物質が増加し自然な眠りが誘発されます。
夜中眠れないと言って、起床時間を遅くすると当然ながら更に不眠が悪くなることになります。
また、加齢とともに睡眠時間が短くなっていきます。
成人の睡眠時間は7時間から9時間程度と言われていますが、50歳程度だと6時間の方も多い印象です。
あまり睡眠時間そのものにはこだわらない方がいいと思います。
また、夜眠れなくて辛いといって昼間に横になる時間を増やすと、不眠が更に悪くなります。
日中横になるのは、昼頃までを目途に30分以内にすべきです。
不眠によく使用されるアルコールは睡眠を浅くし、不安や抑うつを惹起する物質なので、むしろ服用するべきではありません。
既に睡眠薬を服用している患者さんにおいては、寝付けないので早めに薬を服用することを良く見ますが、逆に寝られそうな時間に薬の効果が落ちるので望ましくありません。
むしろ、多少眠気が出てから服用すべきです。他にも色々あるのですが、不眠に関しては安易に薬剤の増量等に頼らず、睡眠環境等の調整を行ってください。

2019年07月31日 苫小牧民報 掲載

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