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膵臓がんの外科治療

膵臓がんの外科治療

狭間 一明

(苫小牧市医師会・王子総合病院)

膵臓は胃の後ろにあるおたまじゃくしのような形をした臓器で、右側は十二指腸に接していて膵頭部、左側を膵体尾部と呼びます。膵臓の中には膵管が走っていて十二指腸に膵液を分泌しています。

膵臓のがんの多くはこの膵管から発生します。膵臓の働きとしてはほかに血糖を調節するインスリンというホルモンを分泌しています。がんの発生部位により頭部がん、体尾部がんと呼びます。 膵臓は身体の後ろ側にあり多くの臓器に囲まれた複雑な場所にあるため、がんが発生しても早期に見つけることが困難で、発見されたときには手術ができない状態のことも多いです。膵臓がんの症状は初期のうちは特徴的な症状はなく、腹部の不快感や胃痛などを検査したときに0偶然見つかる場合があります。頭部がんの場合は黄疸(目や皮膚が黄色くなる)がみられることがあり、糖尿病の悪化によって発見される場合もあります。

 膵臓がんは、小さいうちから他の臓器に転移したり、神経にそって広がりやすい性質があるため膵臓がんの早期発見は現在でも困難です。膵臓がんの治療としては手術治療が唯一根治の望める治療とされています。膵頭部がんでは病変を取り除くために膵頭部とそこにつながっている胃、十二指腸、胆管と近くのリンパ節を切除して小腸をつかって膵管、胆管、胃を再建する膵頭十二指腸切除という複雑な手術が必要です。また膵頭部には門脈(消化管から肝臓に流れ込む血管)や動脈も存在し、がんの進行によってはこれらも一緒に切除して再建する場合があります。複雑な手術であり身体に対しての負担もやや大きくなりますが現在では安全におこなわれる場合が多く、当院ではクリニカルパス(入院時にお渡ししている手術後のだいたいの経過を示したもの)を使用して管理しています。

 膵体尾部のがんでは膵頭部のような再建は必要ないのですが、がんが胃や大腸に浸潤している場合はこれらを一緒に切除する必要があります。また膵臓がんは神経にそって広がりやすい性質がありますが、腹部の神経の集中している腹腔動脈幹という部分を一緒に切除して根治性を高める術式が北海道大学腫瘍外科を中心におこなわれ良好な手術成績を報告しています。膵臓がんの治療としてはほかに内服または点滴による化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療がありますが可能な場合は手術を行い、その後にこれらの治療をおこなう方法がもっとも治療効果が高いとされています。

2011年06月14日 苫小牧民報 掲載

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