40歳を過ぎると急増する大腸がん「自分は大丈夫」
池田 篤
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
池田 篤
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
「私はずっと健康で、がんになるとは思ってもみなかった。ショックです」。
これは外来診察室でよく聞く言葉です。厚生労働省が2019(令和元)年に公表したデータによると、日本人は一生のうち2人に1人が悪性新生物(がん)と診断され、5人に1人ががんで死亡すると言われています。
がんと診断された部位は、多い順に男性が前立腺、大腸、胃、女性は乳房、大腸、肺でした。一年間に約100万人が新たにがんと診断され、大腸がんは約15万人を占めています。
21(令和3)年の人口動態統計によると、がんによる死亡数は、多い順に男性が肺がん、大腸がん、胃がん、女性は03(平成15)年から大腸がんが1位となり、肺がん、すい臓がんが続きます。近年、大腸がんは40歳以降で増加傾向にあり、死亡数も多い病気です。
大腸がんの発症は、遺伝性や腸の炎症に伴うことも知られていますが、原因の一つには生活習慣が挙げられます。特に食生活やライフスタイルの欧米化が大腸がんの増加につながっていると言われています。大腸がんの危険因子は、牛や豚などの赤身肉や加工肉の摂取、肥満や過体重は確実なリスクとされ、動物性脂肪も関与すると言われています。逆に予防因子は、適度な運動と排便習慣、食物繊維や多くのビタミン摂取などが挙げられます。このような危険因子をできるだけ避け、予防因子を増やすことを1次予防と言います。
では、2次予防とは何でしょうか? 答えはがん検診です。1992(平成4)年度から老人保健制度により便潜血検査が導入されています。この検査では約7%の人が「精密検査が必要」という判定を受けます。過去1年間に大腸がん検診を受けた人は、検診を受けていない人と比べて大腸がんによる死亡率が約70%低下するという報告もあり、早期発見による治療の重要性が示されています。しかし、2020(令和2)年度の大腸がん検診受診率は全国平均で6・5%と低率で、苫小牧市でも近年4・4~4・6%で推移しています。
大腸がんは、早期のものであれば大腸内視鏡により根治できる場合もあります。また、内視鏡での切除が困難な場合にも腹腔鏡を用いた大腸切除、さらにロボット支援下大腸切除術(ダビンチ手術)などの最新の低侵襲手術も可能です。多くのがんは無症状で経過し、血便や腹痛などの症状が出現した時点では病状が進行している場合があります。
大腸がんの不安を解消するためには、生活習慣の乱れを改善して1次予防を心掛け、2次予防として定期的ながん検診を受診し、便の異常やささいな症状でも感じた場合にはかかりつけ医への相談をお勧めします。
2023年08月15日 苫小牧民報 掲載