パワハラをなくし健全で快適な職場を作ろう
土屋 潔
(苫小牧市医師会・苫小牧緑ヶ丘病院)
土屋 潔
(苫小牧市医師会・苫小牧緑ヶ丘病院)
職場で人間関係のストレスが原因で適応障害やうつ病を発症する人は少なくない。その中にはパワーハラスメント(パワハラ)と言ってよいケースが相当数あります。
パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。
それでは、どのような行為がパワハラにあたるでしょうか。具体的なパワハラの内容は次の6つに類型化されています。
パワハラが性的な内容であればセクシャルハラスメント(セクハラ)、出産前後の職員に対する嫌がらせはマタニティハラスメント(マタハラ)になります。学校でのいじめ、家庭内暴力(DV)や子どもへの虐待、施設等での利用者に対する虐待も心理的な構造は同じです。
これらに共通するのは、それを行っている本人は加害者意識が希薄なことで、相手の立場になってつらい心情を思いやることができません。
当人は、「部下を教育しているだけでパワハラではない」「部下の成長を考えてやっていることだ」「仕事には厳しさが必要だ」「自分も同じように教育された」と言うかもしれません。しかし、相手が「仕事をやめたい」、さらには「死んだ方が楽だ」と考えるまで追い込まれ傷ついているとしたら、それはパワハラ以外の何ものでもありません。
パワハラをなくすためには、どのような行為がパワハラにあたるのか、相手はどれだけ傷ついているのか、について啓発し、社会全体が「パワハラは許さない」という共通認識を持つことが必要です。
職場では、組織のトップを先頭に一丸となってパワハラ防止に取り組むことで、個々の人間性を尊重した働きやすい環境を築くことができます。結果的に、仕事への意欲を向上させて生産性を高めることにつながり、会社の経営にとってのメリットも大きいはずです。
2023年04月25日 苫小牧民報 掲載