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増え続ける小児の頭痛(その2)―スマホ中毒を放置した“つけが廻った“・・・―

増え続ける小児の頭痛(その2)―スマホ中毒を放置した“つけが廻った“・・・―

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

 前回報告したように生活の変化から生じた小児の頭痛は急速に増加している。20数年前は頭痛で病院を受診する場合、大人はほとんどが脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血、子どもの場合は片頭痛か稀に脳出血で、大人も子どももこれほど頭痛は多くなかった。

今や日常生活に支障を与える頭痛は大人においても子どもにおいても普通の事で、それも3ケ月以上続く慢性頭痛が多い。頭痛の患者が増えたため、頭痛専門外来も必要となり、私自身18年前苫小牧に着任する際に札幌の専門病院で研修を受けてから来た。地域の中でも頭痛を訴え受診する子ども達は増えているが、その風景は、スマホをいじりながらのないしは体勢の崩れた姿で待合室で診察を待ち、痛みを我慢できず臥床しているような場合は少ない。今の時代の頭痛は原因となる生活背景があり、その結果として生じた“現象”が多い。

以上の特徴から、今の時代の子どもの頭痛への対応は子どもに任せるのではなく、周囲の大人がその原因を分析・評価し、傾向を把握して、頭痛発生の流れを説明し、子どもと共にその対策を考えることが重要である。子ども達は頭痛の原因をよく認識していないので、大人が生活習慣、生活環境、ストレスなどによって発生するということを実証し、子ども自身の自己管理と改善させるという方向性と努力が必要である。この過程を通し、子どもはやれば出来るという自己肯定、自己効力感を獲得し、成長、頭痛も軽減する。以下に今時の頭痛と基本的対応を述べる。

一番多いのは姿勢などからの頭痛:スマホやゲーム、パソコン、テレビを見る時の姿勢による “スマホネック”、“猫背”、など前傾姿勢による頚部の緊張から来る頭痛である。使用時間の制限と共にストレッチ、深呼吸など体をリラックスさせることが有効。スマホにしろ、パソコンにしろ、眼を固定し、瞬きが減るなどの目の疲れも緊張型頭痛を惹起し、ゲーム、それに関連した相手との会話は時にストレスとなりそれも頭痛に影響する。一番効果があるのはスマホ、パソコン、ゲームをしないこと、かなり時間を減らすことであるが、これらの使用環境を変えることはもはや難しく、むしろ勉強は見方を変えれば、日常やっているゲームの様なものであると理解してもらい、スマホやゲームの時間を勉強に変え充実感と達成感を持たせる。

2番目に多いのはストレス関連性頭痛:家庭生活、子ども園、学校生活における子ども達のストレスは想定以上に多い。黙っていても食べ物が得られる、困ったらすぐ助けてもらえる、何をしても許してもらえる、やりたいことは何でもできるのが今の世の中である。その中で思い通りにいかなければストレスになるし、放っておかれてもストレスになる。理由を自ら考えることもストレスになる。ストレスに対しての子どもの症状は、昔は腹痛が主であったが、今は頭痛がほとんどで、ひどい場合は過呼吸、痙攣や麻痺などの症状(身体表現性障害)を現わす。

このような現象に対して傾聴とともに生活環境を整えることや地域内でリハビリテーションを行ない、本人が周囲の思慮の中ストレスへの対応の仕方を覚えることが必要である。支援する地域の大人、教師、養護教諭の役割は大きい。

その他の思春期に多い頭痛:朝起きるのがつらいなど低血圧を主とした自律神経失調症(調節障害)や、お菓子ばかりや好き嫌いでバランスの取れた食事をとっていないための栄養障害による体の不調や貧血、睡眠不足などによる頭痛は少なくない。生活に問題がありそうな場合は、毎日血圧を測って、血圧手帳に記載し、体調、体重を記録すると共に血液検査を行って対応を判断する。子どもの高血圧による頭痛(生活習慣病)も増えている。

増加する子どもの頭痛の多くは病気ではなく生活環境、ストレスなどから生じる現象で、今や生活習慣病とも言える。気候変動と同じように人間が作ったものであり、人間が自ら反省し解決していかなければならない。子どもの頭痛は社会的な問題で大人達が振り返って自ら律する態度が必要である。それが子ども達、地球の未来を守ることになる。私達は試されている。

 

2022年07月13日 苫小牧民報 掲載

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