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昔は少なかった、子どものストレス関連障害(その6) ―地域の中でいかに解決するか、その実際―

昔は少なかった、子どものストレス関連障害(その6) ―地域の中でいかに解決するか、その実際―

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

苫小牧に来て15年、ストレス関連障害はその発現にある程度の傾向があることが分かった。中・高校生を主とした子どもに多いこと、学校による差があること。状況としては競争のある文系のクラブ、体育会系クラブを含め集団活動が必要とされそのグループ活動において代役の確保が難しい場合、個人としては本人の性格が真面目で責任感が強い、指導者が一生懸命、勝利至上主義、親の子どもへの過度な期待や本来の愛情が乏しいなどである。勉強しない、やる気のない子ども、逆に優秀な子ども、ゲームばかりで生活のリズムがない子ども、自己肯定感が乏しい子ども、そしていわゆるハンディキャップをもつ子どもにも発現する。

9.実際と臨床経過

「小学生 女子」 習い事はしていないなど一見自由そうな生活。歩行障害で発症。その後足首が痛い、手首が痛いの訴えあり。苫小牧市内の大病院受診。小児科、整形外科で検査を受けるも異常なし。札幌のセンター病院に行くも原因不明。そのうち頭痛もあって受診。MRI(磁気共鳴画像装置)で問題なく、生活に過干渉な母や祖母に生活指導を行うなどによって改善、歩行可能となった。 

 

 「中学生 男子」 教室内の人間関係に巻き込まれていた。母親が保護的で自分での判断が少ない。授業中の手の震えと呼吸困難で発症、小児科と精神科を受診。投薬、カウンセリングを受けるも改善無く、頭痛があり受診。MRIなどの検査で問題なく、勉強の強化とともに本を読むなど本人と母親へ自信を付ける指導をし、他人の顔色を見ないで判断と行動をするなど生活習慣を変えた。成績の向上とともに発作は減少、消失した。

 

「中学生 男子」 何でも押し付けられる性格。突然の頭痛と腰痛で発症。その後、過換気様、歩行困難で市内大病院に入院。頭や腰のCT(コンピューター断層撮影),MRIでは異常なし。その後大学病院に転院するも原因不明、膠原(こうげん)病が疑われ外来で投薬されていた。学校で急に手の震えが続き意識消失し、倒れ、受診。母親が過干渉であったため母の言動を指導し、病院、学校、家庭の共通理解と地域内リハビリで症状は軽減している。

 

 「中学生 女子」 真面目でできないと言えない性格。学校祭の準備、部活動、さらに定期テストがあり全てに対応しきれなくなり、全身のけいれん、歩行不能で発症。小児科、整形外科の検査では問題なく、紹介受診。MRIで問題なく、学校内対応、地域内対応などを養護教諭、家庭、地域内リハビリと連携して行い症状はほぼ消失。周囲に惑わされず目的意識をもって向学し、一流大学合格。受診は数年に及んだ。

 

  「中学生 女子」 上級生になり、部活動で後輩の指導を任されるようになり、頭痛、記憶障害、体調不良で受診。MRI検査するも問題なし。鎮痛剤は何れも効果がなく、うつ傾向から不登校となった。養護教諭と共通理解の上で継続受診。受験体制、生活リズムを整え、保健室登校などを活用、その後登校も可能となり症状は減少。

 

人間は親を含め周囲の教えで成長する動物である。今の時代は子育てが難しくなり、子育てできる親が少なくなりストレスに対し回避させるばかりで、子どもに対応の仕方を教えてこなかった。このことがストレス関連障害を表出させている。子どもは集団生活の中に入ってもストレスに弱く、相談相手もいず、容易に身体症状症(身体表現性障害)、適応障害となってしまう。しかし、事例の中で見られるように子を育てる親自体が弱体化していることも現実としてあり、親へのアプローチ、親の強化が必要な場合も少なくない。どこの原点に帰ればよいのか?難しい。

次の機会には高校生発現や遷延化した場合の現実と問題点、方向性について述べる。

 

2020年02月26日 苫小牧民報 掲載

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