市民の皆様へ

Medical column とまこまい医報

とまこまい医報

糖尿病の合併症について

糖尿病の合併症について

濱田 耕司

(・苫小牧東病院)

糖尿病についてお話をさせてもらいます。

 

糖尿病とはインスリンというホルモンの作用不足により、高血糖状態を呈してしまう代謝異常です。

このインスリン作用不足や高血糖状態の程度と期間により、臓器障害・合併症が生じてしまいます。

その合併症には大きくわけて、急性のものと慢性の合併症があります。

 

急性合併症は、著しいインスリン作用不足や高血糖により、意識障害をきたし適切に加療しなければ死につながることもある危険な合併症(医学用語では①ケトアシドーシス、②高浸透圧高血糖症候群と呼ばれております)です。

  • ケトアシドーシスというのは、簡単にいうと、血液が酸性に傾いてしまい(この酸性への傾きをアシドーシスといいます)全身の生命活動に支障をきたす病態で、重度の場合は昏睡にいたります。原因は、体内の極度のインスリン欠乏で生じるため、インスリン依存状態の方がインスリン投与を中断してしまった場合に起きるリスクが大きいです。
  • 高浸透圧高血糖症候群というのは、高血糖と脱水状態により体液が濃くなる(高浸透圧になる)ことにより、生命活動に支障をきたす病態で、これもまた重度になると昏睡にいたります。高齢者で多く、感染症が引き金になることが多いです。

ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態は、程度の差があれ、急性合併症として重なり発症していることもあり、ケトアシドーシスの治療には、インスリンでのアシドーシスの改善が必要で、高浸透圧状態には、補液による脱水(高浸透圧)の改善が必要になります。

ご家族に糖尿病患者さんがいて、発熱や摂食不良になった際は、このような急性合併症を防ぐために、病院への早めの受診介助のほどをお願いいたします。

 

次に慢性合併症についてお話させて頂きます。

慢性合併症としては、糖尿病特有の合併症として細小血管症(神経障害・網膜症(眼)・腎症)が挙げられます。

これらの合併症は、急性合併症と違い、急に発症するものではなく、糖尿病のコントロールの程度と罹病期間の積み重ね(年単位)で生じる合併症です。

例えばこの中の網膜症を簡単に説明しますと、眼の網膜にある小さな血管が破綻して眼の中で出血が起きてしまい、視力障害をきたす合併症です。最悪の場合は失明に陥ることもあります。視力低下などの症状は、より重症になるまで出てこない場合があり、注意が必要です。網膜症の程度がひどいほど回復や治療も難しくなる半面、初期に治療をおこなえるほど視力低下や網膜症の進展の予防ができます。そのため、日々の糖尿病のコントロールに加え、自覚症状がなくとも、眼科で定期的な診察が大事になってきます。

網膜症の進行には、糖尿病の管理以外に、高血圧・脂質異常・喫煙といった因子が網膜症をより悪化させるので、それらの管理も注意していく必要があります。

 

また高血圧・脂質異常・喫煙は、大血管症(心筋梗塞や脳血管障害)のリスクであり、そこに糖尿病が合併していると、より大血管症リスクが増大するといわれています。

心筋梗塞や脳血管障害というイベントは、生命をおびやかすイベントで、命が助かったとしても、脳機能障害による後遺症リスクにもつながります。

糖尿病がある方は、あわせて高血圧・脂質異常・喫煙などの管理もセットで行うことが重要であります。

 

これまでは、主に血管障害に起因した合併症をあげましたが、血糖コントロールが悪いと感染症のリスク(細菌感染に対する抵抗力の低下)、骨折のリスク(骨質の低下)、癌のリスク(特に肝臓癌、膵癌)、認知症のリスクが増大することも糖尿病のリスクとして挙げられています。

このように糖尿病は様々な合併症のリスクとなりますが、適切な管理によりこれらの合併症の発症予防と進展阻止につなげることができます。糖尿病治療の目的は、糖尿病がない人と同じ健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を保つことです。

そして糖尿病だけでなく、高血圧、脂質異常などの管理を併せて行うことで、より健康寿命を保てますので、日々の生活習慣(とくに食事と運動。肥満の方は肥満是正)、通院や服薬の継続などに心がけていただければと思います。

 

2020年01月29日 苫小牧民報 掲載

  • 医療・介護サービス提供マップ
  • 苫小牧看護専門学校
  • とまこまい医療介護連携センター
  • 公益社団法人 日本医師会公式チャンネル
ページの上部へ