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昔は少なかった子どものストレス関連障害(その4) ―ストレス関連障害の現実と不登校と地域対応「みんなで…」―

昔は少なかった子どものストレス関連障害(その4) ―ストレス関連障害の現実と不登校と地域対応「みんなで…」―

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

今の時代のストレス関連障害の大きな特徴は、ストレスの複雑さもあるが、個々のストレスに対応する力が弱くなっていること、地域での解決能力が乏しいことがある。漠然としているように見えるが本人は原因が何となく分かっており、何とかしないとならないのも分かっているが、自分で「どうしよう」にならず、だからといって誰かに委ねたいが相手がいない、ないしは「分からない」状況である。体はたまらず、頭痛、腹痛、しびれ、まひなどの症状(現象)を出す。この現象の原因の多くは、親を含めた人間関係、本人の性格や努力の仕方、大人の子ども社会への介入や役割放棄などで、関係するみんなで考えれば解決できるのに、諦め、放り出し、看過しているのが現状である。

 その放置は、不登校、引きこもりなどだけでなく症状や形を変えて残り、生き方そのものに影響を与える(今後の掲載時に述べる)。

 

 8.ストレス関連障害に関係する不登校と対応(自己肯定感の醸成)

 子どものストレス関連障害に伴う身近な現象として、明らかな身体症状以外で分かりやすいのは欠席、不登校である。まず原因の分析と対応を行うが、親を含め周囲の人にとって悩みとなるのは、いかに不登校にさせないか、閉じこもらせないかの対応である。症状と連動および症状なしの不登校があるが、どちらにしろなるべく登校しながらの解決を試みる。ストレス関連障害発症時に登校をどうするかの判断は難しく、良かったかどうかは結果論に近い。

 不登校は表面上の症状悪化抑制に一時的に有効であるが、本来の解決にはならない。可能な限り本人自身が少しでも状況を認識し、乗り越えるにはどうすべきかを考える余地を持ちながら就学の仕方を模索する。もともとの教室、学校にこだわる必要はないが、なるべく一般的な形で復帰が可能かを検討する。家庭の中、地域の中で孤立させないことが最低限必要で、とにかく安心できる場所(基地)を確保する。それができたら本人になぜ学校に通うのかを語り、それには親孝行の意味があるなど、この苦しい経験が今後成長の糧になるということを伝え、自分で判断する訓練を少しでも感じてもらい、自己醸成する。最低限本人の自覚と努力がないといくら支援があっても解決しないことを経過の中で分かってもらう。

 不登校には軽症と重症がある。軽症の場合、本人は多くの場合登校したいと言うが、うまくいかない。少しでも登校するように設定して、駄目ならどうするかにする。家庭訪問、保健室、校長室登校、診断書を書いてもらうなど状況に応じた種々の対応を行う。どちらにしろ学校に行けない自分を客観視してもらい、不登校、引きこもりを悪いことだと思わず、それを乗り越える過程が試練だということを認識し、少しずつ登校時間、回数を増やす。

 行動が何もできないような重症の場合は休校し、日常生活を少しずつ立ち直らせてから復学を目指す。養護教諭、担任などと相談しながら対応する。本人の将来を考えた駆け引きが必要で、トライアンドエラーを恐れず行う。駄目なら転校、休学、就職、転地を考える。重症そうに見えるがそうでない場合もあるので思い込んだ対応はしない。家庭での様子の把握などモニタリングは重要で、ケース会議を開き、方向性を検討する。

ストレス関連障害は傾聴、共感で初めは引き気味に入り、本人が出て来るのをじっと待ち、状況が安定してきたら協調的、積極的に展開してもらい、それが自信になることを認識してもらう(自己肯定)。たとえ転校、不登校、退学を余儀なくされても、それは負けではなく、一時休息である。この過程の中で自己肯定感、達成感を少しでも得るようにすることが後遺症を防ぐ。また大人たちは勝つだけが成功、人生でないことを身をもって話す(勝利至上主義の否定)。

 次の機会には地域内リハビリテーションについて述べる。

2020年01月15日 苫小牧民報 掲載

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