色覚異常、色弱について
中村 聡
(苫小牧市医師会・明野眼科クリニック)
中村 聡
(苫小牧市医師会・明野眼科クリニック)
先天性の色覚異常、色弱は生まれながらにして、色を認識することが難しい病気で、男性の20人に一人、女性の500人に一人の割合でいるといわれております。
遺伝することが多く祖父に色覚異常がある場合には、その男の子のお孫さんに遺伝する可能性があるといわれております。
網膜には赤、緑、青を感じ取る3種類の視細胞が存在し、それぞれの活動の割合で色を感じています。
色覚異常、色弱の方はこの視細胞内にある、色を感じ取るための蛋白質が欠如ないし少ないことが原因となっております。
色弱は生まれた時から、その状態で過ごしているため、本人にはあまり自覚症状がありません。
程度が強い場合にはお絵かきや図画工作の授業でうまくクレヨンや絵の具を選べない、または出来上がった作品の色彩が少し独特であるなどのことから、学校の先生や親が気付くことが多いようです。
かつては学校検診で全児童に色覚検査が行われておりましたが、色覚で学校生活に影響することがあまりないということから廃止され、現在では希望者のみに検査が行われるようになりました。
そのため色弱の程度が軽い場合には気づかれることなく過ごしている場合も少なくありません。
しかしこのために、いざ就職の採用試験の段階で色弱が見つかり、問題となるケースが増えてきております。
専門の学校に進学したが、卒業し就職の段階で進路変更を余儀なくされるケースもあります。
自衛隊、警察消防関係、航空、調理師専門学校など、一部の学校では入学時に検査が行われることもあります。
またデザイン関係や塗装業などの職業に就いた際にも就業に困難を生じる場合もあります。
ですが、職種によっては本人の熱意や少ない努力で対策を講じ、問題を乗り越えていくことも十分に可能な場合もございます。
そのためにも早い段階で色覚異常に気付き、まずは眼科医師にご相談ください。
そのうえで色覚異常の病型、程度を正確に判断し、家族や学校の先生と相談をしていくことが大切であると思います。
2019年12月25日 苫小牧民報 掲載