C型肝炎治療のススメ
小林 智絵
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
小林 智絵
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
苫小牧市医師会の小林智絵と申します。C型肝炎という病気を知っていますか?
C型肝炎ウイルスが感染し、長期に肝臓に炎症を起こすことで、肝硬変や肝臓がんの原因となります。肝硬変、肝臓がんは一度発症するとなかなか治りにくい病気であり、進行すると死に至ることもある恐ろしい病気です。2018年の日本肝臓学会の調べによると肝硬変の成因で一番多いのはC型肝炎でした。最近C型肝炎の治療法が大きく進歩し、多くの患者さんが治るようになりました。
C型肝炎は1989年に発見され、治療薬としてインターフェロン治療が長年用いられてきました。しかし、副作用がほぼ必発であり、1990年代には5%程度の患者様しか治りませんでした。その後、2000年代になってインターフェロンに他の薬剤を組み合わせることで約50%程度まで治療効果は改善しましたが、内臓機能や体力の衰えている高齢者や体格の小さい女性では副作用が強く、これらの患者様では30%程度とさらに低いのが現状でした。
それからわずか三十年で、99%の患者様が副作用なく、96~98%の確率で治る時代となりました。用いる薬剤は直接作用型抗ウイルス薬(DAA製剤)と呼ばれ、2種類以上の飲み薬を組み合わせて2~3か月間、毎日内服します。以前に用いられていたインターフェロンを使わないので「インターフェロフリー治療」とも呼ばれます。人間の肝臓に感染したC型肝炎ウイルスは肝臓の細胞の中で増殖し、炎症を起こします。DAA製剤はウイルスの遺伝子に直接働きかけて、ウイルスが肝臓の中で増殖するのを抑えます。寿命の短いC型肝炎ウイルスは増殖できなくなると、人間の体の中から完全に消えてなくなります。慢性肝炎の段階で治療を受けることで、将来的に肝硬変や肝臓がんの予防ができますし、またすでに肝硬変になっている患者様でも初期の段階であれば安全に治療ができ、肝機能の改善が期待できます。
世界保健機関(WHO)では、2030年まで世界中の約80%のC型肝炎を治療することを目標としています。日本でもC型肝炎を完全に駆逐することを目標としていますが、もう一つ大きな課題があります。それは、まだ自分がC型肝炎に感染しているかどうかを知らずに生活している人が100万人いると推定されており、このような患者様を治療にどのように結びつけるかが今後の課題となっています。
2019年11月13日 苫小牧民報 掲載