喘息における気道炎症のメカニズム
菅原 洋行
(苫小牧市医師会・すがわら内科呼吸器科)
菅原 洋行
(苫小牧市医師会・すがわら内科呼吸器科)
気管支喘息では、好酸球(アレルギー反応を起こす白血球の一種)による慢性気道炎症が病態の中心にあると考えられています。
気道に侵入したアレルゲンは樹状細胞に取り込まれ、未分化なヘルパ−Tリンパ球が樹状細胞から抗原提示を受けて、感染などの生体防御機能を担うTh1細胞、抗体産生やアレルギー反応に関与するTh2細胞に分化します。 Th2細胞が産生するインターロイキン(IL, 白血球から分泌され、細胞間コミュニケーションの機能を果たす)4とIL13がBリンパ球に作用してIgE(アレルギーを起こす抗体の一種)を産生して即時型アレルギー反応を起こし、同時に産生されるIL5が好酸球を活性化して気道上皮障害と平滑筋収縮を起こし、喘息症状が形成されます。 好酸球とリンパ球を抑制する吸入ステロイドが喘息治療の主役とされています。
気管支喘息は多様であり、発症年齢、アレルギー素因、肥満などの性質による分類や気道に浸潤する炎症細胞による分類などが報告されています。最近、抗原受容体を持たない2型自然リンパ球ILC2(innate lymphoid cells type2)からIL5とIL 13が大量に産生されることがわかりました。ILC2の活性化にはアレルゲンを必要とせず、ウィルス感染単独で喘息病態が惹起されます。ステロイド抵抗性にICL2が関わり、アレルギーが重症化、慢性化することが明らかになりました。
喘息を病態から3つに分類することが提唱されました。1)アレルギー性好酸球性喘息は、ダニなどのアレルゲンによって発症し、小児発症が多く、血清Ig Eが高く、末梢血好酸球が多く、吸入ステロイドが奏効します。重症例に抗Ig E抗体が有効です。2)非アレルギー性好酸球性喘息は、成人発症が多く、アレルギー素因が不明で、副鼻腔炎などの好酸球性炎症を認めます。ILC2がIL5産生を介して好酸球血症を起こすため、重症例では抗IL5抗体が有効です。3)非好酸球性喘息は、好酸球性喘息より吸入ステロイドへの反応性が低く、難治性です。喫煙や大気汚染、胃食道逆流症、潜在性の細菌感染など多様な病態が考えられています。
喘息では吸入ステロイド治療が奏効しますが、適切な治療がなければ気道のリモデリング(治らない気道狭窄)を起こし難治性喘息となります。 気管支サーモプラスティは気管支ファイバーを用いて通電し65℃に温めて気道平滑筋を減少させる新しい治療です。気道炎症が落ち着くまで吸入治療を継続することが重要です。
2019年04月24日 苫小牧民報 掲載