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Medical column とまこまい医報

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水痘について

水痘について

鈴木 秀久

(苫小牧市医師会・うとないキッズクリニック)

厚生労働省が水痘ワクチンを定期接種化する方針という新聞記事やニュースを眼、耳にした方は多いと思います。水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって起こる発疹や発熱を主症状とする病気です。伝染力が強く、潜伏期間は約2週間で、多くは合併症もなく1週間から10日の経過で治癒します。しかし、その後もウイルスは体内に残り、後に帯状疱疹を発症することがあります。

水痘は国内で年100万人以上が発症し、年約4000人が重症化して入院、抗ウイルス薬が存在する現在でも年20人前後が死亡と推定されています。重症化の多くは肺炎や肝障害の合併ですが、1万人に10人以下ではあるものの小脳失調症や髄膜炎、脳炎、脊髄炎などの合併もあり、その20%は後遺症が残るか死亡します。成人は重症化しやすく、水痘発症者の90%以上は10歳以下、入院患者の60%以上は成人で、健康な成人が死亡することもあります。

また妊婦が感染すると胎児に四肢低形成、眼球異常、精神発達遅滞などの重篤な障害を残す先天性水痘症候群を引き起こしたり、出生した新生児が重症水痘になって死亡したりすることがあります。小児の軽い病気と考えられがちの水痘ですが、実は非常に怖い病気なのです。さらに水痘に感染して必要になる医療費、本人や家族が仕事や家事を休むことによる生産性搊失などの社会的搊失額は、予防接種の定期化に必要な費用を300~400億円も上回ると試算されています。医療経済的な観点からも、水痘の感染・流行は無いほうが良いのです。水痘ワクチンは日本で開発され、国内で25年、海外で15年以上の期間に1億人以上が接種を受けましたが、副反応は極めて少なく、高い安全性は世界で証明されています。

また米国、ドイツなど水痘ワクチンが定期接種化された国では発症者、重症患者、死亡者のすべてが激減し、その有効性も証明されています。水痘はワクチンにて予防が可能な病気で、ワクチンの安全性、有効性も高いことから積極的な接種が必要です。だからこそ定期接種化の方向性が示されたのですが、関係法令の改正等はまだで、定期接種化の時期は確定していません。昨秋から水痘の流行も拡大していますので、定期接種化までワクチン接種を待つことは危険です。1歳になったら早いうちに水痘ワクチンを接種されることをお勧めします。2回接種が望ましいので、1回接種した方も含めて、かかりつけ医とご相談下さい。

2014年02月11日 苫小牧民報 掲載

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