No.106
◆診療情報共有ネットワークについて
苫小牧市医師会
久保 公三

つい10年ほど前までは、一つの総合病院の中でもいくつかの科を受診すると、それぞれの科でカルテが作られていました。電子化の流れの中で、血液検査。画像検査に関しては部分的に共用できるようになってきましたが、同じ病院の中にいても、どんな病気があって、どんな検査をして、どんな治療を受け、どんな処方がされていたのかは、他科のカルテを取り寄せたり、手紙や電話で問い合わせなければ、必要な情報を得られないのが普通でした。そのため検査や処方が重複したり、重要な既往や合併症などの情報が伝わらず、診療上の支障を来すこともありました。

それが、この数年で大規模な総合病院でも電子カルテの導入が急速に進み、1患者1カルテは当たり前の状態となり、すべての診療科で患者情報を共有できる様になりました。その結果、重複検査は減り、他科への紹介も容易となり、集学的治療もスムーズに行える様になっています。患者さんが一つの総合病院の中で複数科受診を行う際の問題は、こうして解決してきましたが、他の医療機関を受診した際には、これまでと同様の問題が残ったままでした。

すなわち1枚の診療情報提供書と医師間の手紙や電話のやりとりだけでは、それぞれの病院に蓄積された患者さんの膨大な診療情報は相手方に十分に伝わらず、情報の有効利用ができないという、以前の総合病院と同じ状態です。その結果、再検査が行われたり、何度も同じ事を聞かれたり、治療方針や説明が異なったり、と患者さんのみならず医療側にとっても余計な労力と負担が生じていました。そういった中で、個々の医療機関に電子媒体を利用した患者情報が蓄積されているのであれば、今度はその情報をそのまま病院や診療所の間で直接利用できるようにしよう、ということで考えられたのが医療情報共有ネットワークです。

東胆振地区ではID-LINKというNEC(SEC)が提供しているネットワークシステムを採用して、既存のインターネット回線を利用し、各医療機関で保有している患者情報を提供することとして、平成25年4月に苫小牧市立病院と王子病院が情報開示病院となり、苫小牧医師会に事務局を置いた東胆振医療情報連携ネットワーク協議会が発足しました。すでに実際の運用が6月から始まっており、苫小牧市立病院に限っていえば、旧来の連携システムと併せて39の医療機関が登録されており、患者さんも50名、旧連携システムを合わせると700名にのぼる登録がすでに終わっています。診療情報に関しては、患者さんの同意を得た上で、登録された共通IDを用いて、該当者に限った診療情報を必要な範囲で得ることができる様になりました。その結果、医療機関と担当医が替わっても、診療の継続性を容易に維持することが可能になり、地域の中でも1患者1カルテに一歩近づいてきました。同じような取り組みは、道内では函館地区、室蘭地区、札幌地区などですでに始まっており、今後は地域を越えたネットワークも速やかに構築されてくるものと予想されます。さらに医療機関の連携だけではなく、院外調剤薬局や介護施設などにも医療情報を提供することで、よりスムーズな対応が可能となり、地域医療の質の向上にもつながると期待されています。また、こうした取り組みにより、患者さん自身の利益だけではなく、医療従事者にとっても負担軽減につながり、結果として地域医療がより充実していくものと考えられます。


久保 公三 (苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)

2013年9月10日 苫小牧民報 掲載

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