No.101
◆先天性サイトメガロウイルス感染症
苫小牧市医師会
高柳 直己

風疹はかつて、こどもの軽い病気と思われていましたが、昨年から成人を中心に大流行となり大きな問題となっています。妊婦、特に免疫のない女性が妊娠初期に感染すると、赤ちゃんに難聴、心臓病、白内障、知能障害などの症状の先天性風疹症候群を発症することがあるからです。風疹以外にも妊娠中の感染が胎児に引き起こす病原体がいくつか知られています。そのひとつにサイトメガロウイルスがあります。サイトメガロウイルスは、以前は多くの人が体の中に持っていましたが、いまは免疫を持たない人が増えています。健康であれば感染してもほとんど症状が出ることもないのですが、妊娠しているときに初めて感染すると、胎児にも感染し、生まれてから先天性風疹症候群と似た症状を引き起こす可能性があります。

現在、推計で、年間およそ1000人の子どもがこのウイルスによる障害を起こしているとされています。 その数は、ここ15年で、約2倍になっている調査もあります。実は、このサイトメガロウイルスに感染したことがない、免疫を持たない女性が増えてきているからです。

30年前、日本で免疫のない妊婦は4パーセント程度でしたが、今では約30パーセントにまで急増しています。20代の女性の2人に1人が免疫を持っていないと見られています。 その理由は、兄弟数が少なく、子ども同士で取っ組み合ったり、じゃれあったりするような遊び方をしなくなっている。 また、世の中が清潔志向になり消毒するあまり、子どものときに感染しないまま大人になるケースが増えていると考えられています。清潔なこどもの環境がサイトメガロウイルスに免疫のない大人を増やしているなんとも皮肉な結果ともいえます。

では、どうしたら赤ちゃんを先天性サイトメガロウイルス感染症から守れるのでしょうか。現在、このウイルスを予防するワクチンはありません。 そのため、妊婦に免疫がないことが分かると、感染を防ぐため徹底した指導が行われます。上の子のオムツ交換の後などに手洗いをこまめにすることや、食事の際に上の子どもが使ったスプーンを口に入れないことなど、細かに注意をしましょう。一刻も早いワクチンの開発が望まれます。


高柳 直己 (苫小牧市医師会・たかやなぎ小児科)

2013年5月28日 苫小牧民報 掲載

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