No.91
◆胃がん検診の新しい流れ
苫小牧市医師会
神谷 喜一郎

日本におけるがん死亡原因のトップが胃がんから肺がんに移ったと報じられ、胃がんの発生数が減少していると考える方が多いと思いますが、実際は今も増え続けております。胃がんの発生数が増加しているのに死亡数が減少しているのは、そのほとんどが治療できる状態で発見されているからです。早期に発見するため胃がん検診は大切ですが、毎年煩雑な胃バリウム検査を受けなければなりません。これが毎年うけなくても良く、検査が血液検査で済むとなれば皆さんは検診を受けられるでしょうか?

1990年以降ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)は胃がんの原因と考えられ、ピロリ菌感染が長期間持続すると胃粘膜の萎縮が進行し、一部は腸上皮化生に進展し、分化型胃がんが発生しやすくなることがわかってきました。ピロリ菌の有無をチェックするピロリ菌抗体測定と胃粘膜の萎縮の程度を判定する血清ペプシノーゲン測定を組み合わせることにより、血液検査で胃がん検診ができるようになってきました。

血清ペプシノーゲン・ピロリ菌測定の結果から、ピロリ菌抗体陰性・ペプシノーゲン陰性(A群)、ピロリ菌抗体陽性・ペプシノーゲン陰性(B群)、ピロリ菌抗体陽性・ペプシノーゲン陽性(C群)、ピロリ菌抗体陰性・ペプシノーゲン陽性(D群)、の四群に分けます。A群は胃粘膜の萎縮性変化は乏しく、胃がんの発生はほとんど見られない。B群は胃粘膜の萎縮性変化は弱く、胃がんの発生も少ない。C群は胃粘膜の萎縮が明瞭に見られ、胃がんの発生の危険性が高い。D群は胃粘膜の萎縮が強く腸上皮化生を伴い、胃がん発生の危険性が最も高い。

A群は胃がんの発生はほとんど無いため、毎年胃がん検診を受ける必要はありません。B、C、D群はピロリ菌の除菌療法を行うことにより、胃がん発生を低下させることができます。特にB群は胃の萎縮が軽微であるため、除菌に成功するとA群とほぼ同じ状況となります。C、D群は除菌後も胃がん発生の可能性を残しているので、内視鏡による定期的な観察が必要です。特に、除菌に成功しなかったC群やD群では1〜2年に1回の内視鏡検査が必要と考えます。血清ペプシノーゲン・ピロリ菌測定による検診は、絶食することなくいつでも受けることができます。さらに、除菌することにより胃がんの予防にも繋がります。血液検査による胃がん検診を希望される方は、実施している医療機関にご相談ください。


神谷 喜一郎 (苫小牧市医師会・桜木ファミリークリニック)

2012年10月9日 苫小牧民報 掲載

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