No.80
◆所謂「医師不足」について
苫小牧市医師会
岩井 和浩

 昨今、「医師不足」が言われており、医学部定員の増加、医学部の新設について議論が行われているところです。日本における医師免許保有者数(医療現場を離れた医師もカウントした統計)は増加傾向で、昭和60年頃に比べておよそ1.5倍の人数となっております。なぜ、いま医師不足の状況となっているのでしょうか。医療需要の多い高齢人口の急激な増加や医療技術の高度化にともなう相対的な医師不足、医師の事務作業量の増加とともに、地域における偏在、診療科間の偏在、女性医師の増加など様々言われております。また、新医師臨床研修制度の導入もその要因と考えられています。新医師臨床研修制度は平成16年に導入された制度で、卒後2年間の初期臨床研修の期間に多数の診療科で研修することを義務化し、医師としての幅広い基本的な診療能力を身につけるとともにその人格を涵養することを目的としています。

 その導入により卒後は、より臨床研修体制の整った市中の病院で研修を行う医師が増加したため、大学に勤務する医師が減少し、地方の病院からの医師引き上げが起こる一方、大学医局の医師派遣機能が低下したこととあわせて、地方での医師不足の要因の一つとなっているといわれています。新医師臨床研修制度は、その理念は正しいもので、研修により総合的診療能力を持った医師養成に大きく寄与していると考えますが、一方でその弊害にも留意しておく必要がありそうです。

 最近では、医師の絶対数の不足に対し、医学部定員の増加がはかられ、一定の期間地域医療に従事することを入学の条件としている「地域枠」の定員数も増加しており、地域による偏在に対して一定の効果が期待されますが、医師が一人前になるためにはおよそ10年必要とされ、早期に充足することはできません。診療科間の偏在については、診療科のうち産科、小児科、外科、内科などの労働条件等が厳しい診療科は避けられる傾向にあり志望する医師も減少傾向です。

 今後は診療科の偏在に対し、専門医制度の見直しにより必要医師数を定めることなど、適正な診療科医師数の調整が必要となってくると思われます。女性医師に関しては、結婚や出産などで一時的に現場を離れた医師に対する職場復帰への支援、育児と両立できる環境の整備なども求められています。医師不足に対し、さまざまな手段が講じられており、その効果がなるべく早く出てくることが期待されます。


岩井 和浩 (苫小牧市医師会・王子総合病院)

2012年3月10日 苫小牧民報 掲載

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