No.79
◆子どもの事故について
苫小牧市医師会
川口 眞男

 わが国では、少子化の進行と世界でも例のない急速な高齢社会が、人口減少社会を招きました(2008年が人口減元年)。合計特殊出生率1.34というような低出生率で生まれてきた少ない子どもたちを、いかに健全に育てるかが以前にも増して重要になってきたのです。子どもを取り巻く医療状況は予防接種の普及、充実と医療の進歩によって改善し、感染症を主とする死亡は着実に減少しつつあります。しかし子どもの死亡原因の第1位は2008年までは1-19才では「不慮の事故」だったのです。この間、国、医学会など関係機関は手をこまねいていた訳ではありません。10年近く前から「エンゼルプラン」、「健やか親子21」などで小児保健医療水準の維持、向上と子どもたちにとって安全な生活環境の整備をすすめてきました。その甲斐あって「不慮の事故」は2009年に1位の座を「先天異常」に明け渡すことになりました。幼児1-4才と5-9才の死亡数は1997年でそれぞれ422人、314人だったものが2009年には148人、138人とそれぞれ着実に減ってきています。幼児1-4才148人の死亡例の内訳は、交通事故45人(30%)、溺死、溺水41人(28%)、窒息21人(14%)と上位3つで72%を占めています。でも問題なのは死亡例ばかりではないのです。「不慮の事故」の死亡例は子どもの事故全体から見れば氷山の一角にすぎません。子どもの事故防止に精力的に取り組んでいる方々が、事故の情報を収集分析した結果から次のようなことを明らかにしました。

 幼児1-4才では死亡1人に対して入院40人、外来受診3600人。5-9才では死亡1人に対して入院90人、外来受診4700人もの事故、外傷が発生している。死亡例の陰には多くの子どもたちが事故で傷害を受け、後遺症に苦しんでいる事を。事故による傷害は子どもの健康問題として大きな位置を占めています。子どもたちを事故から守るには、安全に暮らせる環境の整備とともに安全に対する教育が重要です。

 そのためには@ どんな事故がどのようにして起きているのかA 特に多い家庭内での事故を防ぐにはどんな工夫が必要かをお母さん方にはいろんな機会を利用して伝えるようにしB 子どもたちが接するおもちゃ、商品、設備の安全性の向上をはかりC 教育の現場での安全教育をすすめD 小児保健にかかわる行政関係者、保健医療専門家、保育、教育関係者が 

 事故の情報を共有し協力していくなど、解決の容易でない、時間のかかる課題も含まれます。子どもに接する人々すべてが事故防止の共通認識を持ち、協力してこれらの課題を克服し、子ども達にとってより安全な社会の実現を目指したいものです。


川口 眞男 (苫小牧市医師会・川口小児科医院)

2012年2月28日 苫小牧民報 掲載

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