No.75
◆高度生殖医療の現状
苫小牧市医師会
岩城 雅範

 この30年で生殖医療、いわゆる不妊症の治療は格段の進歩をとげ、体外受精、顕微授精はもはや一般的な治療となっています。体外受精は卵子に濃度を調整した洗浄精子液を卵子とともに培養し受精させることです。顕微授精は精子数が非常に少ないあるいは運動性が悪い場合に直接、精子を極細いガラスの針を直接、卵子に刺し卵子内に精子を1匹注入することです。

 このように技術は発展したのですが、20数年前はいかに卵子を多く採取できるかとか、培養液をどのようにつくるかということが問題となっていた状態で今思えばよちよち歩きの治療でした。今は質のいい卵子を5〜6個採取します。そして体外受精あるいは顕微授精を施行します。このとき顕微授精では卵子の内部構造を特殊なレンズとコンピューターによる画像処理にて確認し針を卵に挿します。

 これは特に紡錘体という染色体に関係する部分を傷つけないようにするためです。次の日に受精を確認します。受精卵が細胞分裂し始めると胚と呼びます。採卵したその周期に胚を戻す新鮮胚移植といいます。また、採卵した周期ではなく、胚を凍結し、その後2〜3ヶ月後にホルモン補充周期(ホルモン剤を投与し人工的に子宮内膜を増殖させる)において凍結した胚を融解し戻すことを凍結胚移植といいます。

 現在、新鮮胚移植より凍結胚移植の成績が良い傾向にある報告が多いと思われます。また、鳥を飼い増やしたことのある人はわかると思いますが、ふ化がうまくいかない時に人が殻を破ってあげることがあります。ヒトの胚も同じく胚の着床(胚が子宮の内膜に接着する)がうまくいかないことがあり、人工的に胚の殻をレーザー光線で破くことがあります。これを人工ふ化(AHA)といいます。4日目までにAHAを施行し5日目まで培養した胚盤胞と呼ばれる胚を移植します。このような一連の最先端の方法で、国際的には妊娠率は約35%前後、流産率は10〜20%です。凍結した胚は理論上は半永久的に保存可能で妊娠可能です。近々に、流産を繰り返す人の培養液が発売されます。また着床障害、子宮内膜がひどく薄いあるいは子宮内腔の癒着(アッシャーマン症候群)のある人の内膜の状態改善のため、G-CSF(本来は血球を増加させる目的の薬)を子宮内腔に投与する方法も報告されています。このように少しずつでも新しい有効な方法が見出されています。


岩城 雅範 (苫小牧市医師会・岩城産婦人科)

2011年11月22日 苫小牧民報 掲載

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