ますます進歩・多様化する消化器外科領域の腹腔鏡手術の現状

 

No.53

 
         
 

 腹腔鏡手術とは、腹部に5-12mmの穴を数ヶ所あけて、そこからカメラや手術器具を入れて、テレビモニターを見ながら行う手術です。従来の大きな切開創を要する開腹手術に比べ、整容性(傷が小さい・きれい)に優れ、術後の回復も早いことから現在多くの施設で施行されています。腹腔鏡手術は外科手術400年余の歴史の中で最も大きな革新と言われ、胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は現在第1選択の術式となりました。胃癌・大腸癌に対する腹腔鏡下手術も10数年前から徐々に始まり、施設間での取り組みにまだ差がありますが手術件数は増加傾向です。現在鼠径ヘルニア手術・虫垂切除術から悪性腫瘍手術まで様々な手術に適応されていますが、同時に大きく二つの方向に分化してきています。  ひとつは従来から難易度が高い・視野の確保が困難とされた手術(食道切除・胃全摘・低位直腸切除・肝切除など)に対し腹腔鏡手術最大の利点である拡大視効果を活かして、むしろ開腹手術より精緻に行おうとする方向です。 もうひとつは、より整容性に優れた腹腔鏡手術を目指す方向です。NOTES手術(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery:経管腔的内視鏡手術)や単孔式腹腔鏡手術(SILS:Single Incision Laparoscopic Surgery)があります。 NOTES手術は、口・肛門・膣などから軟性内視鏡を挿入し、管腔壁に小切開を加え腹腔内に到達して行う手術です。体表面に傷が付かず診断・処置が可能ですが、胆嚢摘出術・卵管結紮術・胃壁全層切除などの手術に、限られた数施設で臨床試験として施行されている段階で、まだまだ改良点の多い手術と言えます。 単孔式腹腔鏡手術は、臍部の単一創(単孔:通常3cm前後)から腹腔鏡と手術器具をいれて行う腹腔鏡手術です。1990年台から虫垂切除や胆嚢摘出術の報告がありましたが、当初広く普及しませんでした。しかし近年腹腔鏡手術の普及に伴い胆嚢摘出術を中心に急速に広まっています。特徴は何と言ってもその優れた整容性にあります。臍部の約3-4cmの切開創は、術後縮小し目立たないものとなります。その反面小さな創から細いカメラや複数の手術器具の出し入れが必要な点や体形等で難易度が変わる点があり、すべての症例に適応されるものではありません。しかし先進的な施設では胃・大腸手術など様々な手術に適応が広げられています。 このように腹腔鏡手術は近年ますます進歩・多様化しています。これから手術を受けられる場合、当該施設での腹腔鏡手術適応疾患・腹腔鏡手術の利点や欠点など十分理解された上で手術を受けていただくことをお勧めします。

 
 
      
苫小牧市立病院

高橋 周作

 
     
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
         
  高橋周作
(苫小牧市立病院)
2010年9月28日 苫小牧民報 掲載


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