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Medical column とまこまい医報

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放射線治療について

放射線治療について

北原 利博

(苫小牧市医師会・王子総合病院)

放射線治療は、疾患の状態に応じて、根治的照射と緩和的照射に使いわけられる。治癒が期待できる喉頭がん、前立腺がん、子宮頸がんなどが、根治的照射の対象である。また、抗がん剤などの化学療法に放射線治療を併用することで治癒の可能性が高まる疾患として、悪性リンパ腫、肺がん、食道がんなどがあり、乳房温存術における術後照射としての放射線治療もある。緩和的照射は、局所進行した腫瘍や、骨転移、脳転移などの遠隔転移によって発生する疼痛や臓器障害(呼吸困難、嚥下困難、出血、意識障害など)の軽減や改善を目的におこなわれる。最も多く見られるのは骨転移による疼痛である。腫瘍によって変形した骨や腫瘍自体が骨膜を刺激して痛みが続く。骨の破壊が進むと病的骨折を起こす。大腿骨などで起こると歩行不能になる。脊椎の骨転移が進行すると、腫瘍や壊れた骨が脊髄を圧迫し、下半身不随となる。放射線治療によって腫瘍の増大が抑制され、痛みが和らぐだけでなく、骨折、麻痺のリスクが軽減する。除痛は強力な鎮痛剤によっても得られるが、鎮痛剤には腫瘍抑制の力はない。骨転移が判明したら、放射線治療を行うほうがよい。とはいえ、多発性骨転移となると簡単ではない。照射部位が増えるたびに、骨以外に照射される範囲が増えて、身体にとって負担となる。最近使えるようになったストロンチウムという放射性同位元素がある。骨の傷んだところに集積してベータ線という放射線を出し続けるので、1回の注射で全身の骨転移に対する治療が出来る。ベータ線が届く範囲は半径1センチメートルに満たないので、骨以外の臓器は照射されずにすむ。しかし、骨では骨髄抑制が起こって白血球や赤血球が減少する状態が続くため、抗がん剤治療が困難となるデメリットがある。放射線治療は、腫瘍に対して十分な線量を与え、まわりの正常組織には無駄な照射を避ける治療計画が必要である。治療計画CTにおいてそれらを正確に同定することから作業は始まるが、最近、PET/CTが、がん治療後の評価、がんの再発・転移の検出に有力な検査法であることが分かってきた。当院ではお隣の市立病院にPET/CT診断を依頼して有用な画像情報を入手し、常勤の放射線治療医が確実、迅速な放射線治療計画に役立てている。地域における放射線治療の展開にとって、こういう形の診療連携も大事なのである。

2010年06月15日 苫小牧民報 掲載

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