◆予防医学について

 

No.38

 
         
 

「予防医学」というと、健康診断や人間ドックを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

広辞苑によると予防医学とは「個人もしくは集団を対象として、健康保持・疾病予防の方策を研究・実践する医学の一分野」と書かれています。

一方、予防医学に対して病気の診断と治療を中心とする医療、つまり日頃私達医師が病院・診療所で行っている仕事が「治療医学」となります。

少し前までは予防医学の目標は急性伝染病の予防に向けられていました。

つまり天然痘、腸チフス、結核などの感染症予防のため法的規制のもとに予防接種、患者の隔離、消毒などが義務づけられていました。

第二次世界大戦後、医学の発達、抗生物質の開発、環境衛生の整備とともに感染症による死亡率が激減しました。

また、我が国は世界に類を見ない医療保険制度の確立により、平均寿命について見ると、先進諸国間で、戦後最下位であったものが、1984年から今日まで世界一の長寿国を維持しています。

しかしその反面、最近では栄養の過多、運動量の低下、ライフスタイルの変化、ストレスなどにより日本人の健康状態は決して万全ではなく、がんや循環器病などの生活習慣病の罹患率が増加し続けています。

国としても生活習慣病を減らすため、予防医学の視点から2000年に「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」として各数値目標を設定しましたが、2007年の中間報告では、逆に患者数が増加するという事態になりました。

そこで生活習慣病になる前段階のメタボリックシンドロームに着目し、病気の早期発見、早期治療を目的に2008年から国の施策として特定健診・特定保健指導が始まったのです。

このように予防医学の目標は、その時代における疾病構造、社会環境に対応して変化する必要があります。

古くから西洋では「予防は治療に勝る」といわれており、中国においてもまた『千金方』の中で「すでに病むものを医すのは下医であり、病まないうちに医すのが上医である」と予防医学の重要性が指摘されています。

一方、最近ヒトゲノムプロジェクト、いわゆるヒト遺伝子の解析が終了し、ゲノム機能の解析へと進み、個々の病因の遺伝子レベルでの解明、疾病の遺伝子診断などの研究が始まっています。将来遺伝子を用いた病気の診断・予防という時代が到来し、遺伝子診断に基づいた予防医学が発展するかも知れません。

しかしながら今は、皆さんは健康維持、病気の早期発見に心がけ、医師は地域における健康管理、保健教育などを通して疾病の予防と健康づくりを推進してゆかねばなりません。

21世紀は予防医学と治療医学が車の両輪となり国民の健康を守る時代になるでしょう。

 
 
     
  苫小牧市医師会
大岩 均
 
     
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
         
  大岩 均 (苫小牧市医師会・医療法人 王子総合病院)
2010年2月9日 苫小牧民報 掲載


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