◆医療の電子化・IT化における課題

 

No.34

 
         
 

 医療の高度化、専門化に伴い、患者情報の量が飛躍的に増え、診療業務を構成する部門も多岐にわたるようになりました。これに対応するため、わが国では複雑化した診療報酬請求事務へのコンピューターシステムの導入からITの活用が始まりました。
 次に、この医事会計業務を効率化するために各種検査の指示伝達システムであるオーダーエントリーシステムの導入が進められ、さらに処方、注射、処置、食事、外来予約、入院予約など多くの診療業務がこのシステムに取り込まれました。
 同時に検査自体へのIT活用が進められ、ほとんどの検査結果が電子化されるようになりました。そして最後に医療スタッフの記録に電子化の波が及びつつあります。いわゆる電子カルテの導入です。
 従来の紙カルテは医師の診療業務上のメモとして認識されていましたが、電子カルテでは医療チームの各部門構成スタッフが入力する情報をデータベース化しネットワークを介してスタッフが共有する統合患者情報システムとなります。また、複数の医療機関で情報を共有すれば、地域医療ネットワークシステムに発展します。
 従来の紙カルテの保存義務期間は5年、X線フィルムは3年ですが、これは保管場所の確保が困難だからです。診療録の電子化によりこの問題は解消され、保存可能期間は半永久的に延長します。
 こう書くと良いことばかりのようですが、実は課題も多くあります。まず発生源入力で指示を出すことの多い医師の入力業務が増加し、医師不足のなかで医師の疲弊の原因の一つとなっています。
 コストの問題もあります。電子カルテの導入費用が病院の規模にもよりますが数億から数十億円とされており、医療費の削減が続くなかでは採算を度外視しなければ導入できません。
 患者情報は病歴や遺伝子情報も含めて究極の個人情報とされており、セキュリティー対策が極めて重要ですが、電子化された情報は大量流出の危険性があり、情報を広く共有し高度に活用すればするほど安全管理に支障が生ずるという矛盾を抱えています。これらの課題を克服しつつ、医療の電子化を進める必要があります。

 
 
     
  苫小牧市医師会
志藤 文明
 
     
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
         
  志藤 文明
(苫小牧市医師会・医療法人社団頭頸会 苫西耳鼻咽喉科クリニック)
2009年12月8日 苫小牧民報 掲載


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