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「子宮頚がん」予防ワクチン

「子宮頚がん」予防ワクチン

花谷 馨

(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)

 がんを予防するのに、ワクチンが有効だってご存知でしたか? そんな夢のような話が可能になってきたのが「子宮頚がん」なのです。
 「子宮頚がん」は乳癌の次に多い女性のがんで、日本では年間約1万2千人が発症し、約3千人が死亡しています。
 そんな罹ると恐い子宮頚がんですが、がんになる直前の早期の段階で発見できれば、子宮を残して頚部の一部のみ切除する方法(すなわち、その後も妊娠することが可能)で、100%治るのです。早期発見には、子宮がん検診が最も有効であることがわかっているのに、日本での検診率は欧米の70~80%に比べて、20%台と先進国中最低です。子宮がんは中高年の病気と誤解している人が多く、20~30歳台の受診率は5~10%とさらに低い値ですが、最近この年代の発症が増えてきて、出産時期と重なることより≪マザーキラー≫とも呼ばれ、大きな問題となってきています。
 早期発見よりももっといいのは、がんにかかることを予防することです。子宮頚がんは、その原因がイボを作ったりするパピローマウィルス(HPV)感染であることがわかりました。(昨年この発見に対しノーベル賞が贈られました)。ウィルス感染ならワクチンによって予防が可能なわけで、すでに、開発されたワクチンが109カ国で認可され、そのうち20カ国では公費負担で大規模導入されています。
 しかしわが国では世界のすう勢に大幅に遅れ、今年このワクチンがやっと認可される見込みですが、公費負担の導入には多くの困難が予想されます。その一つには、1コースは3回接種で約3万6千円かかる費用を、医療費削減政策をとっている政府がどこまで負担してくれるのかという点。もう一つは、HPVが性交渉により感染するという点です。HPVは女性の約8割が感染を経験するありふれたもので、そのうちごく一部の人でがん化するので、誰でもHPVに感染し、子宮頚がんになる可能性があります。そのためワクチンの接種対象年令を、性交渉前の若年者に行なうのが効果的とされていて、外国では9~16歳に設定していますが、この対象年齢が性交渉の若年化を助長するとして、親や教育界などからの反発が予想されます。
 今後まだまだ課題は多いのですが、早く日本も他の先進国のように、「女の子が大人になったら、必ずワクチンと子宮がん検診を受けるもの」と言う認識が行き渡るようになってほしいものです。

2009年07月28日 苫小牧民報 掲載

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