国民の健康と行政
吉鶴 博生
(苫小牧市医師会・明野よしつる耳鼻咽喉科)
吉鶴 博生
(苫小牧市医師会・明野よしつる耳鼻咽喉科)
今や日本の平均寿命は医療技術の進歩や、国民の生活水準の向上により世界一の水準を維持しています。平均寿命の伸長は各種ワクチン接種事業、周産期医療や小児医療体制の整備が進んだことで、新生児や乳児の死亡が減少したことも大きく関係しています。国民の健康維持や、病気の予防に対して行政はどのように取り組んでいるのでしょうか。
国は、国民医療計画に則り、「健康寿命(;健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の延伸」や、「健康格差(;地域や社会経済状況の違いによる集団間の差)の縮小」を目指し、国民の健康増進を推進することを目標として、様々な事業を展開しています。近年、死亡者数の上位を占める、悪性新生物・心疾患・脳血管疾患の原因は、食生活や喫煙、飲酒、運動不足などの生活習慣が関係しています。これら生活習慣病と言われるものには、がん、急性心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、高血圧、高脂血症、慢性閉塞性肺疾患、痛風、肥満、骨粗鬆症、歯周病などが含まれ、この予防や、早期発見のための健診が行われています。予防では、小児期からの歯科健診の普及、健康診断の際の食や栄養・運動に関する指導や情報提供、未成年者や妊婦の喫煙や飲酒による弊害の啓蒙などが行われています。
しかし効果については評価が難しい項目もあります。治療のための医療体制の整備も行われていますが、医師不足や医療機関の集約により、地域格差が生じてきているのも事実です。
さらに、65歳以上の高齢者人口が増加し、寝たきりや痴呆など、高齢化に伴う障害で医療の必要性の高い要介護者が増えてきています。高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を続けていくためには、医療と介護の連携の強化もさらに進めていくことが必要となります。いずれは大多数の方がお世話になることになる、医療や介護の将来について地域全体で真剣に考えなければならない時期になっているのではないでしょうか。
2013年03月26日 苫小牧民報 掲載