新型インフルエンザと国民皆保険制度
常松 和則
(苫小牧市医師会・北海道立苫小牧病院)
常松 和則
(苫小牧市医師会・北海道立苫小牧病院)
新型インフルエンザとは、「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速な蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響をあたえるおそれがあるとみとめられるもの」と規定されています。パンデミックを引き起こした最近の例は、皆さんの記憶に新しい2009年のA/H1Npdm09ウイルスです。
このパンデミックインフルエンザの臨床像は結果的に季節性のインフルエンザと大差ないものでした。普通のインフルエンザは寒い季節、すなわち日本など北半球の温帯地域では毎年12月から3月にかけて流行します。このように、普通のインフルエンザは季節と連動して流行するため「季節性インフルエンザ」と呼ばれています。一方、新型インフルエンザは季節とかかわりなく始まると想像されています。
実際に2009年のパンデミックを教訓に世界保健機構は2009年に世界インフルエンザ対策計画の改定版を発表しました。また我が国でも厚生労働省が中心となり行動計画が作られてきましたが、2009年のパンデミックを経て改訂が行われました。先に述べましたように2009年の新型インフルエンザは季節性インフルエンザと大差ない臨床像となりましたが、好発年齢が年長者にシフトしたり、青壮年層でも重症化するなどの特徴がみられました。
医療者として特に注目するところは、その死亡者数の割合ですが、我が国は人口10万人対死亡率が0.15で海外と比較して著しく少なかったことです。その要因は色々検証されていますが、大きな要因は国民皆保険制度にあると考えます。我が国では、発熱患者がすぐ医療機関を受診でき、どの医療機関でもインフルエンザキットが使用可能です。このため早期診断ができ、抗インフルエンザ薬による治療が早期に始めることができたことによると推測されます。今後とも国民皆保険の堅持が重要と考えます。
2012年12月11日 苫小牧民報 掲載