医療と消費税
藤咲 淳
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
藤咲 淳
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
日本では消費税が国民への負担増につながることから大きな政治問題となっていますが、このままですと消費税率は現在の5%から2014年4月からは8%、2015年10月からは10%に引き上げられる予定です。消費税は国民が購入する食料、住宅、車などほとんどのものに課税され、これからの国民生活に大きな影響を与えることが危惧されていますが、実は医療の現場でも大きな問題になることが予想されています。現在教育、福祉事業などいくつかのものは非課税の扱いになっておりますが、医療も同様に医療保険を使っての保険診療については患者さんからは消費税を頂いておりません。病気で受診した際に領収書を見ていただくとわかりますが、保険診療分については消費税の請求はないはずです。しかし一方、医療機関は薬剤、医療機器、給食材料など全ての購入物品については購入先に5%の消費税を支払って買っています。
国の現在の考え方は2年ごとに国によって決められる診療報酬に消費税分を上乗せさせ補っているという説明です。つまり患者さんと保険組合などが消費税分を負担していると説明している訳ですが、その割合や負担分などは全く明らかにされていません。そして大病院では購入にかかる消費税が年間数千万円から数億円にものぼるとされ、各医療機関にとっては消費税の負担が経営を圧迫しているのが現状です。
ところで消費税が増税されたら医療現場ではいったいどうなるのでしょうか。増税分は診療報酬にさらに上乗せされるのでしょうか。この場合は患者さんが医療機関で支払う額が今までよりも増えることになります。
あるいは今のままの様に医療機関自体で購入についての消費税を負担しなければならないのでしょうか。これは日本の多くの医療機関が赤字を抱えたりわずかな黒字で経営を余儀なくされている今日、さらに厳しい消費税を負担しなければならない病院・診療所の運営が行き詰るかもしれないことを意味します。今後消費税についてはどのようなものにどのように課税されるかなど、より具体的な問題として取り上げられていくと思いますが、充実した医療体制を提供するためには健全な病院経営が必要であり、国民のみならず私たちも注目していかなければならない問題です。
2012年11月13日 苫小牧民報 掲載