小腸検査にカプセル内視鏡
太田 英敏
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
太田 英敏
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
この20年、胃がんや大腸がんの診療に内視鏡が普及し、早期発見・治療に大きく貢献してきました。これに対し小腸は胃の奥で大腸の手前と深部にあるため、従来の内視鏡では到達するのが困難で、しかも約6mと長く、内視鏡検査は困難とされてきました。小腸診療のために、近年カプセル内視鏡とダブルバルーン小腸内視鏡が開発され、診断と治療が急速に進み、2008年4月には一部小腸疾患にカプセル内視鏡も健康保険適応となりましたので、消化器診療のトピックスとして取り上げてみました。
従来小腸の検査は胃の奥の十二指腸まで挿入した管からバリウムと空気を流し、造影する検査が行われてきましたが、患者さんに苦痛を伴う検査でした。また、腫瘍や潰瘍などの病変診断には使えても、形に変化のない出血性病変の診断や組織を取って調べる病理診断などはできませんでした。
2000年にイスラエルのGivenImaging社が開発し臨床応用されたカプセル内視鏡は、外径11mm、全長26mmの大きさで飲み込むだけで検査ができるので、患者さんの負担は大きく軽減されました。カプセルが通過できないような狭窄がある病変には使えませんが、出血病変の見つけ出しには大きな効果を発揮することが認められております。残念ながら今のところ日本では、カプセル内視鏡の適応は小腸の出血病変に限定されておりますが、進歩が著しく、食道、大腸などにも海外では使用されています。今年10月には国産のカプセル内視鏡も認可され、益々、性能の向上、適応拡大が期待されています。
一方、2001年に自治医科大学の山本博徳教授が開発したダブルバルーン小腸内視鏡は、二つの風船の収縮・拡張を繰り返し、尺取り虫のように挿入するもので、多少苦痛などの点では劣りますが、カプセル内視鏡や小腸造影検査で疑われた病変の組織を取って診断を確定したり、止血やポリープ切除などの内視鏡的治療にも使うことが可能で、外科手術以外有効な方法がなかった小腸病変に有用な機器と期待されています。
これら検査の進歩により、従来考えられていたほど小腸病変が少なくないことが徐々に明らかになってきました。内視鏡技術のさらなる進歩により、小腸病変の実態が明らかになり、検査の適応拡大も今後進むものと思われます。苫小牧市内の専門病院でもこれらの検査が可能となってきておりますので、胃・大腸に異常なく、小腸病変の疑われる方は消化器専門の医療機関にご相談ください。
2008年11月24日 苫小牧民報 掲載