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Medical column とまこまい医報

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五疾病五事業について

五疾病五事業について

片岡 昌哉

(苫小牧市医師会・ウトナイ病院)

昨年七月六日社会保障審議会医療部会で、医療計画策定に当たって従来の四疾病五事業から精神疾患を加えて五疾病五事業とすることが合意され、本年四月一日よりその改正省令が施行された。具体的な医療計画への反映は二〇一三年度からとなる。

四疾病五事業とは、がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の「四疾病」と、救急・災害・へき地・周産期・小児の「五事業」から成り立っており、これに精神疾患が加わって五疾病となった。四疾病五事業は二〇〇七年の第五次医療法改正で盛り込まれたものである。医療法は医療サービスの根幹を規定する法律で、四疾病の基準は「患者数が多く死亡率が高い等緊急性が高いため、限られた医療資源による効率的な対応」と「症状の経過に基づくきめ細やかな対応が求められることから、医療機関に機能に応じた対応」が必要な疾患と説明されていた。ここに今回精神疾患が加えられたことになる。

データをみると二〇〇二年の患者調査で精神疾患の受療患者数(二五八万人)が糖尿病患者数(二二八万人)を抜いて以来、精神疾患患者数は増加を続け、二〇〇八年の調査では三二三万人を記録している。これはがん患者の一五二万人の二倍に達し、四疾病で最も多い糖尿病の二三七万人を大きく上回っている。また精神疾患による死亡は年間一万一千人、年間三万人で高止まりしている自殺者の九割は何らかの精神疾患を患っていた可能性があるともいわれており、緊急性の高い課題でもある。マスコミ等でもしばしばうつ病や認知症、発達障害の話題が取り上げられており、「自分の親しい人三人の顔を思い浮かべてみて、そのうち誰も精神的におかしくないとするとおかしいのはあなただ」という言説が流布するほど、いまや精神疾患は重要な国民的疾患になったということだろう。

精神疾患に関する医療計画の目指すべき方向としては ①住み慣れた地域で治療・支援を受けられる体制 ②医療機関の機能分担と連携、保健・医療・介護・福祉・生活支援・就労支援等の総合的な支援 ③アクセスしやすく必要な医療を受けられる体制 ④退院支援・地域連携の強化、情報の公開などがあげられている。 少子高齢化社会の本格的な到来を迎え今後ますます身近なものとなっていくであろう精神科医療に関心を持ち、道による医療計画の策定や医師会の動向にご注目いただきたい。

2012年09月07日 苫小牧民報 掲載

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