女性医師・女性看護師に対する子育て支援の取り組み
吉鶴 博生
(苫小牧市医師会・明野よしつる耳鼻咽喉科)
吉鶴 博生
(苫小牧市医師会・明野よしつる耳鼻咽喉科)
近年、医師の不足・偏在が問題となって地域医療の崩壊が進んでいます。その対策として医学部の定員を増やしたり、地域枠を設けて卒業後数年を地域医療に従事させるなどいろいろな取り組みがなされています。しかし、その効果が表れるのは十数年先と言われています。ここ数年の医師国家試験の女性合格者比率は30~35%で、女性医師数も全医師の2割に達しています。
女性医師のうち20~30歳代の結婚・育児に関わっていく年代の割合が約4割を占めています。全国的には、このうち特に女性医師の比率の高い産婦人科ではこの年代が7割を超え、小児科も5割を超えています。これらの方が、子育てをしていくことを考えた場合、一時的に医療現場の戦力ダウンとなるのは避けがたい事実です。更に、これらの医師のうち2割程度が育児期間中の通常の就労が難しくなり、退職を余儀なくされています。女性医師のみならず女性が大半を占める看護職においても慢性的な人員不足が続いています。子育てをしながら職場復帰が容易にできるような社会的支援、家族の一層の理解が必要となります。
そこで、子育て中も休まず就労を継続してもらうための支援策として 1)ワークシェアリング体制の整備:勤務時間の短縮など余裕のある就労の確保、そのための 2)産休・育児時の人員補充システム(これはマンパワーに余裕がないとできないが、医師の場合、1~2年くらいは出張医でカバーするなど) 3)病児保育・長時間保育・学童保育制度の整備 4)復帰までブランクがある場合の研修支援 など様々な方策が挙げられています。
今日の医療現場ではこれら女性たちのパワーなしでは、充分に機能することができない状況になっています。個々の病院での取り組みも進んでいますが、国や地方自治体、医師会、看護協会のさらなる支援が必要となるでしょう。
2012年07月10日 苫小牧民報 掲載