光干渉断層計(OCT)を使用した眼底検査
渡辺 一順
(苫小牧市医師会・喜早眼科)
渡辺 一順
(苫小牧市医師会・喜早眼科)
光干渉断層計(Optical Coherence Tomography : OCT)は1997年に日本に導入されて以来、この数年で改良を受け解像度が飛躍的に上がり、網膜や視神経乳頭の病気が客観的かつ正確に診断できるようになりました。最近では大学病院のみならず、一般病院や開業医にも広く普及してきています。今回は眼科領域のトピックスとして解説したいと思います。従来の眼底検査は肉眼にて網膜や視神経乳頭の表面からの観察しかできませんでした。OCTは赤外線を網膜に当てて、その反射を三次元的に解析して網膜の断面の構造を見ることができます。そのため、病気の広がりや深さがわかり、1000分の数ミリ大のものを見つけることができます。それにより、表面から見てわからなかった浮腫や網膜神経線維の減少などがわかるようになりました。とりわけ、視力に関与する網膜黄斑部の病気(加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑上膜、網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫など)、視神経乳頭の病気である緑内障の診断や進行が定量的(=数値で表される)に診断できます。
緑内障で例を挙げてみましょう。従来は,視神経乳頭所見、眼底写真、網膜神経線維所見で緑内障を疑い、確定診断には視野検査が行われてきましたが、熟練した医師の間でも結果が一致しないという問題があります。さらに、視野検査は患者さんの自覚的応答に依存する検査なので特に高齢の患者さんでは再現性がないこともあり、確定診断を付けるのが難しい症例が少なからずあります。OCTを使えば網膜神経線維層の厚みが数値で表されるので評価が一定になります。緑内障初期病変では、いままで視野検査のみで確信が持てない症例でも網膜視神経線維層の欠損が画像表示されるので緑内障の診断が容易になりました。これにより緑内障の早期発見が可能になり、また診断精度の向上が期待できます。
患者さんにとってOCTの利点は検査を受けることが楽だということです。顎と額を固定し、機械の中を覗いて視線を固定するだけで、赤外線を使用するため普通の眼底検査と違ってまぶしさを感じることはありません。もちろん痛みも伴いません。検査時間も数秒で済みます。
OCTは簡単で安全に行える検査ですが,まだすべての眼底病変に対して有用とは言えません。今まで行われてきた視力・眼圧検査、眼底検査、視野検査、蛍光造影検査が不要になったのではなく、OCT検査を追加することによってさらに詳しく病態を知ることができ、治療に役立つものと考えられます。
2011年11月08日 苫小牧民報 掲載