こどものけいれんと紛らわしいもの
小林 徳雄
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
小林 徳雄
(苫小牧市医師会・王子総合病院)
日本人のおおよそ百人に一人はてんかんと診断され、こどもの十数人に一人は熱性けいれんを経験します。けいれんは決して珍しい病気ではありません。 脳炎/脳症、髄膜炎や頭部外傷、脳梗塞,脳出血、急性中毒(薬物,アルコール)、急性代謝障害(低血糖など)などでもけいれんを引き起こすことがあります。 けいれんと紛らわしい症状も、珍しいものではありません。 正しい理解で、生活に支障をきたさないようにしたいものです。 こどものけいれんと紛らわしいものについて、代表的なものをいくつか挙げます
① 憤怒けいれん 泣き入りひきつけとも言います。痛み,怒り,不機嫌により激しく泣いていて,急に息を止め、顔色が悪くなり意識消失,ぐにゃりと力が抜けた状態になり、長引いた場合は全身を硬直させます。あるいは、不意の痛み,驚き,恐怖により,泣くこともなく急に意識を失い,ぐにゃりと脱力,顔面蒼白になったりするものもあります。
② 入眠時ぴくつき 入眠時ぴくつきは、睡眠開始時に起こる短い小さなぴくつきです。単発あるいは反復し、左右非対称で下肢に多いが,上肢,頭部の筋にもみられます。
③ 夜驚症/夢遊病 夜驚症は睡眠中に突然起こる強い恐怖で,悲鳴,啼泣,興奮などを示し,1~10分続きます。 夢遊病は,睡眠中に突然立ち上がる,歩き回る,走り回るなどを示し,1~40分続きます。 いずれも夜間睡眠の前半3分の1の時間に起こり,4~12歳に多いとされます。覚醒させようとしても覚めず,本人は覚えていません。家族性がある場合があります。
④ チック 顔面,頚部、肩,上肢などに目立つ突発的,常同的に繰り返す急激な運動です。精神的緊張で増加します。起こっている最中に他の動きを妨げず,本人はあまり困りません。眠っている間は起こりません。
⑤ 神経調節性失神 急に意識を失い崩れ、脱力します。 急に立ちあがったり、あるいは長く立っていて起こる起立性調節障害と,恐怖や痛みなどによる迷走神経反射、咳,排尿,嚥下などによる反射によるものがあります。
⑥ 心原性失神 稀ではありますが、不整脈で意識を失うことがあります。たいへん危険です。
⑦ 急性代謝障害(脱水、低血糖、低カルシウムなど) 脱水や低栄養などから意識障害をきたしたり、けいれんすることがあります。
⑧ 心因性発作 精神的なものから起こります。発作症状は様々で、症状だけで診断するのは困難です。同じ状況で起こりやすく、他人が見ていない所では起こりにくい傾向があります。心因反応のみの場合と,てんかんがあって心因反応が混在する場合があります。確実な診断には発作時脳波が有用です。
けいれんではないのにけいれんと紛らわしいものは多く、逆に、けいれんなのにけいれんではないと誤解されることもしばしばあります。霊的なものと誤解されて過ごしてしまうすらあります。困っている場合には、医療機関の受診をお勧めします。けいれんか、違うものか、解決すべき問題がないか、いっしょに考えましょう。
2010年11月09日 苫小牧民報 掲載