尿失禁と骨盤臓器脱
豊田 健一
(苫小牧市医師会・とよた腎泌尿器科クリニック)
豊田 健一
(苫小牧市医師会・とよた腎泌尿器科クリニック)
尿失禁(尿もれ)とは、自分の意思に反して勝手に(不随意に)トイレではないところで尿が漏れてしまう状態をいいます。
実は尿失禁に悩む女性は、かなり多いようで、決して高齢者特有の病態ではないのです。尿失禁は、日常生活を傷害し、QOLを低下させるという点で、非常に深刻な病態なのです。
尿失禁の原因もさまざまならば、失禁の程度やタイプもいろいろです。ここでは、紙面の関係上、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁についてお話します。
まず、切迫性尿失禁は尿意を感じるとすぐにトイレに行きたくなって(尿意切迫感)、間に合わずに尿が漏れてしまうタイプです。
最近では、尿失禁のあるなしにかかわらず、強い尿意切迫感と頻尿が合併する病態を過活動膀胱と呼ぶようになりました。治療は、抗コリン剤による薬物治療になります。
効果は良好ですが、便秘や口の渇きなどがおこることがあります。さらに抗コリン剤を服用してもよくならない頻尿に間質性膀胱炎を原因とする頻尿がありますので、注意が必要です。
次に、腹圧性尿失禁は女性で一番多い尿失禁で、咳やクシャミなどおなかに力がはいった拍子に尿が漏れてしまうタイプです。
大きな原因は、骨盤をささえる骨盤底筋が弱って膀胱と尿道をしっかり支えられなくなるためです。
女性ホルモンの低下や妊娠・出産や肥満もゆるみの大きな原因になります。治療は、骨盤底筋を鍛える体操や干渉低周波治療、薬物、手術と多岐にわたりますが、失禁の程度などを踏まえて選択されますので、主治医とよく相談してください。
また、骨盤底筋が弱ると骨盤内臓器(膀胱・子宮や小腸)が膣などから脱出してくる病態もあります。
骨盤臓器脱は排尿困難や尿失禁を生じ、QOLを傷害するため、積極的な治療が必要です。
最近では、骨盤底にシリコンメッシュを入れ、臓器を支える簡単な手術が導入されています。
TVMと略されますが、入院期間も1週間程度ですみますし、是非、お悩みの方は、専門医にご相談してみてください。
尿失禁や骨盤臓器脱は適切に治療すれば、必ず改善しますので、是非、専門医を受診され、快適で、ストレスのない、ドライな生活を楽しんでください。
2010年02月23日 苫小牧民報 掲載