とまこまい医報
眼科トピックス[加齢黄斑変性について]
眼科トピックス[加齢黄斑変性について]
渡辺 一順
(苫小牧市医師会・喜早眼科)
加齢黄斑変性は、主に高齢者の失明原因となる病気の一つで、今までは満足な治療がありませんでした。ところが最近の5年間でこの病気の診断と治療が目覚ましく進歩しました。進化した診断機器と新薬を使い、早期発見・早期治療によって視力低下を最小限に抑えることが期待できるようになってきました。
眼はカメラと似た構造で、前方にレンズが、後方に映像が投影されるフィルム(網膜)があります。黄斑は網膜の中央にある、物を見るために最も感度の良い部分をいいます。脈絡膜(みゃくらくまく)は網膜よりさらに外側に位置する血管が豊富な組織で、網膜の一部を栄養する役割を担っています。
加齢黄斑変性は加齢により黄斑が変性(荒廃)する病気です。脈絡膜から病的な血管(新生血管)が生えてきて起こる滲出(しんしゅつ)型と、新生血管がなく黄斑そのものが変性してくる萎縮型の二つのタイプがあります。滲出型は難治性で、新生血管の破裂により急激な視力低下を来たし、特に中心部が見づらいという症状が出現します。萎縮型の場合、病状の進行は緩やかで、視力低下も軽度であることがほとんどです。今回は滲出型の最新の治療について解説します。
① 光線力学的療法(PDT)
光に反応する薬剤を血管内に注射し、特殊なレーザーをあてて新生血管を固めて止血し、進行を抑えます。ただ、視力が比較的良好な場合は網膜の下に線維膜ができたり、逆に出血が起きたりするなどの合併症があるため適応は慎重を要します。
② 薬物療法
新生血管の原因となる血管内皮(けっかんないひ)増殖因子を妨げる薬剤を眼球内に注射する治療です。新生血管を成長させる体内物質の働きを抑えて病気の進行を緩やかにします。副作用としては感染、脳梗塞・心筋梗塞を引き起こす可能性がありますので、注意が必要です。
③ PDTと薬剤との併用療法
黄斑変性のいろいろな型・重症度に応じて、それぞれの治療の異なる効果を同時に発揮させて治療します。
このように治療が進歩したとはいえども視力の回復には限界があります。従って、この病気を悪化させる因子(喫煙・紫外線)を避け、抗酸化ビタミン(ビタミンA,C,E)やルテインを含む食品・サプリメントを摂取し、病気の予防を心がけると良いでしょう。
2009年10月27日 苫小牧民報 掲載