とまこまい医報
関節リウマチの最新治療法<抗サイトカイン療法>
関節リウマチの最新治療法<抗サイトカイン療法>
沖 一郎
(苫小牧市医師会 会長・沖医院)
[関節の痛みが無くなった!!]
関節リウマチは関節におこる炎症がもたらすつらい痛みや腫れ変形を起こす病気です。炎症の慢性化により関節の骨や軟骨が破壊され関節が変形し強直し動かなくなります。
全国で関節リウマチに悩む患者さんは70万とも100万ともいわれ高齢化に伴い年々増加傾向にあります。圧倒的に女性に多く40代が最も多いことがわかっています。関節リウマチははっきりとした原因はわかっていませんがウィルス感染と免疫の異常が関与していることは確かなようです。免疫の機能に異常が起こると体の大切な成分を異物とみなして抗体をつくり自分自身を攻撃することがあります。これを自己免疫疾患といいリウマチもこのひとつです。自分自身を自分で攻撃して壊すわけですからリウマチの治療は非常に難しく困難でした。最近は非常に有用な治療が開発され素晴しい効果が得られていますので簡単に説明します。
リウマチの患者さんの免疫異常ではサイトカインという生体内物質の一種のTNF(腫瘍壊死因子)が関節の軟骨の滑膜の増殖をおこします。このTNFがリウマチの患者さんの関節内では過剰に作られています。このサイトカインの働きを抑えることによりリウマチの関節の破壊を抑え関節の炎症を抑える治療法を抗サイトカイン療法といいます。
抗サイトカイン療法に使用する薬剤を生物学的製剤といいます。生物製剤は最新のバイオテクノジーを駆使して開発され生物が産生した蛋白質を利用してつくられています。
この生物学的製剤の登場により関節リウマチの治療は大きく進歩しました。現在日本では4種類の製剤が使用可能です。いずれも注射薬です。インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブはTNFの働きを直接抑えるものですがトシリズマブはインターロイキン6という物質の働きをおさえます。
これまでの抗リウマチ薬にくらべて生物学的製剤には高い炎症抑制作用がありますが特に肺炎や結核などの感染症に注意が必要です。苫小牧でも専門医では使用が可能です。
生物学的製剤の治療を開始するにあたってはその必要性」、効果、安全性、費用に関して専門医と十分に相談することが大切です。
2009年09月22日 苫小牧民報 掲載