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「糖尿病の名前が変わる(ダイアベティスという呼び方の提案)」

「糖尿病の名前が変わる(ダイアベティスという呼び方の提案)」

湯口 善成

(苫小牧市医師会・苫小牧病院)

メタボ健診は今となってはすっかり市民権を獲得している言葉ですが、もとになるメタボリックシンドロームという言葉は、1999年に世界保健機関(WHO)が提示した概念とされています。それまではシンドロームX、マルチプルリスクファクター症候群、内臓脂肪症候群、死の四重奏などさまざまな呼び方が提唱されていました。日本では2005年に日本内科学会など8医学会がメタボリックシンドローム診断基準を策定し、06年に日本新語・流行語大賞のトップ10入りしたことで一気に認知されるようになりました。

日本糖尿病学会(JDS)と日本糖尿病協会(JADEC)は、23年9月に糖尿病の新しい呼称として「ダイアベティス」を提案し、時間をかけて広く議論していくことを発表しました。19年にJDSとJADECは合同委員会(アドボカシー委員会)を設立し、現在に至るまでこの問題について取り組んでいます。JADECが21~22年に患者1000人を対象に実施したインターネットアンケートでは9割が病名に何らかの抵抗感・不快感を持つとの結果になっています。

「ダイアベティス」は、国際的に使用されている(糖尿病を意味する)“diabetes”を片仮名で表記したものです。必ずしもダイアベティスという呼び方にこだわるのではなく、広く受け入れられる呼び方があれば議論しましょうというスタンスでしたが、25年12月現在で他に広く受け入れられるような呼び方は出てきていないようです。

当初から「何でもかんでもカタカナでなくてもいいのではないか」というご意見があります。確かにごもっともで感覚的に理解できるのですが、負のイメージを払拭(ふっしょく)するには新しい呼称への変更が効果的であるとの考えから最終的に「ダイアベティス」が採択された経緯があります。メタボリックシンドロームは新しく導入された概念という点で糖尿病の呼称変更とは状況が違いますが、日本語の直訳の「代謝症候群」ではなくメタボリックシンドロームのまま社会に定着していますね。

ロサンゼルスドジャースの大谷翔平選手は毎試合、第1打席に立つ時に審判と相手チームのベンチに向かって一礼します。そんな大谷選手の行動は米国でとても評価されています。大谷選手の行動や呼称変更の提案の根底に流れるのは相手に対する敬意(リスペクト)ではないでしょうか。そんな日本特有の精神をこれからも紡いでいけたらいいなと思っています。

2025年12月24日 苫小牧民報 掲載

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