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Medical column とまこまい医報

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「こころの医療難民」を出さないために-苫小牧の現状と挑戦-

「こころの医療難民」を出さないために-苫小牧の現状と挑戦-

岩城 弘隆

(苫小牧市医師会・道央佐藤病院)

「心の調子が悪いけれど、どこに相談すればいいのか分からない」「予約が何カ月も先まで埋まっている」。そんな声を、苫小牧では多く耳にします。

 厚生労働省の統計では、精神疾患をもつ人は全国で約576万人。20年前の2.5倍で、国民の4〜5人に1人が一生のうちに心の病を経験します。うつ病や不安障害、認知症、そして子どもの不登校や発達障害まで、心の問題はすでに〝特別なこと〟ではなくなりました。

 苫小牧には精神科病院が三つ、クリニックは1カ所のみ。人口規模に比して医療資源が乏しく、受診待ちが常態化しています。これは単に「病院が足りない」という問題ではありません。長期的に支え合う体制が地域全体に根付いていない。それが〝こころの医療難民〟を生む本質です。

 心の病は、手術のように「治して終わり」ではなく、回復までに半年から1年以上を要することもあります。その間に支えるのは、医療だけではありません。職場、学校、家庭、そして地域のつながりです。

 最近では、市内の保健師や心理師、教育関係者が連携し、早期相談の体制を整えつつあります。こうした地域資源が結び付けば、専門医療までの「長い待ち時間」を埋める力になります。

 医療機関としての道央佐藤病院も、地域のハブとしてこの動きを支えています。高度治療や心理療法を整備したのは、医療の〝中心化〟ではなく、〝地域全体を底上げする拠点〟をつくるためです。若手医師やスタッフが地域で学び、他病院・行政・教育機関との連携を深め、苫小牧全体の医療と福祉の底上げを進めています。医療を「まちづくりの一部」として捉える挑戦です。

 それでも、すぐ受診できないときは、次のことを意識してみてください。

 ① 信頼できる人に「悩み」を話すこと ― 話すことで心が整理され、孤立を防げます。

 ② 生活リズムをできる限り健康に近づける ― 睡眠・食事・日光・運動がメンタルの土台です。

 ③ お酒をいったん断つこと ― 酒はメンタルに百害あって一利なし。回復の妨げになります。

 ④ 地域の相談窓口に頼ること ― 保健師や心理師など、身近な専門家を頼ってください。薬や医療だけが支えではなく、人とのつながりが何よりの力になります

 北海道で最も若い院長と理事長のペアとして、私たちは既成概念にとらわれず、地域と共に歩む新しい精神医療を築いています。
 「心の不調があっても、安心して暮らせるまち」。苫小牧の一人ひとりの心に希望の灯をともすこと、そしてこのまちがそんな地域へと変わっていくこと。
それが、私たちの願いです。

2025年10月31日 苫小牧民報 掲載

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