リンパ節が腫れたら―悪性リンパ腫について
黒田 裕行
(苫小牧市医師会 ・王子総合病院)
黒田 裕行
(苫小牧市医師会 ・王子総合病院)
身体を洗っている時など、首や腋(わき)にしこりを感じていることはありませんか。リンパ節はリンパ管が流れている道の駅みたいなもので、皮膚の下や身体の内部の全身のあらゆるところに無数にあります。リンパ節が腫れる場合、多くは細菌やウィルスによる感染が原因なのですが、時にがんのリンパ節転移や悪性リンパ腫(以下、リンパ腫)のことがあります。
血液中の白血球は好中球(顆粒球)とリンパ球に分けられ、リンパ球はリンパ節やあらゆる臓器に駐在して、感染から身を守る「免疫」という重要な役割をしています。
リンパ腫はリンパ球が「がん化」した造血器腫瘍で、リンパ節もしくは消化管や肺などあらゆる臓器に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。リンパ腫は造血器腫瘍の中で最も多い病気で、発病の平均年齢は60歳後半です。その発症率は、2020年で年間10万人当たり約20人を超えて年々増加傾向にあり、がん全体の中でも8番目ぐらいに多い病気です。「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別され、ホジキンリンパ腫は10%で、非ホジキンリンパ腫が90%です。
非ホジキンリンパ腫はB細胞・T細胞・NK細胞性リンパ腫に分類され、B細胞性リンパ腫が多く、リンパ腫全体の4分の3程度です。リンパ腫の診断には、リンパ節など臓器を生検(ほんの一部摘出)して顕微鏡で病理組織を調べます。その病理組織型により治療薬が選択されます。
また、陽電子放射断層撮影「ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET=ペット)」検査により、リンパ腫の広がりを最も鋭敏に調べることが可能です。
リンパ腫は、抗がん剤や放射線が効きやすい腫瘍であり、初回の治療により多くの患者さんでリンパ腫を消失させることが可能です。これは完全寛解と呼び、完治したわけではありませんが、この状態が長らく持続することで完治したと判断します。近年では新薬が次々に開発され、完治する方も増えてきました。以前は若年で大きな病気をもっていない再発難治性リンパ腫の患者さんのみ、完治を目指した造血細胞移植ができました。
最近では抗体医薬が次々に開発されており、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR―T)や二重特異的抗体により治療効果が向上しております。リンパ腫の患者さんも高齢者が増えて併存疾患もあり、すべからく移植やCAR―T療法はかないませんが、患者さんの生活の質を落とさぬよう当院では適切な治療を心掛けております。リンパ節が腫れたり、リンパ腫と診断されたら、心配されずにご相談ください。2025年02月11日 苫小牧民報 掲載