これって膠原病でしょうか?
麻生 邦之
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
麻生 邦之
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
苫小牧市立病院 内科では一般内科診療に加え、リウマチ膠原病の診療を行っています。関節リウマチは聞いたことがあっても、膠原病と言われてもあまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。膠原病は本来身体を守るはずの免疫が何らかの原因で全身の様々な臓器を攻撃してしまう病気です。皮膚・筋肉・肺・心臓・腎臓・消化管・血管など全身に炎症が起こるため、気付かれずに他の臓器別診療科を受診するケースも多々あります。加えて最初はつかみどころがない症状だけのことも多く、診断まで時間を要することもあります。「風邪を引いたわけじゃないのに熱が続いている」、「倦怠感がずっと続いている」、「ぶつけたわけじゃないのに関節が痛い」、このような訴えでかかりつけの先生に受診すると、色々な検査の中に「抗核抗体」というWordを目にされたことがあるかもしれません。この抗核抗体というのは膠原病の一部である抗核抗体関連膠原病に関連した採血項目です。提出しやすい検査である反面、その解釈には注意を要します。この検査結果が40倍以上だと陽性と判定されますが、過去には膠原病ではない健常者にこの検査を行った場合、100人中32人が40倍、13人が80倍、3人が320倍となったという報告があります。すなわち、膠原病ではない読者の皆様方に盲目的に検査をしても陽性と判定される可能性があるということです。では膠原病の症状が完成していない初期に我々内科医がどのように本物と偽物を見分けているかというと、診察を受けて初めて気づくような些細な所見に注目しています。その一つがNail fold capillary change(NFCC)すなわち爪の付け根の毛細血管の変化です。人体で毛細血管のような細い血管の変化を観察できる場所は限られます。眼科で観察する眼底検査もその一つで、膠原病の一つである全身性エリテマトーデスでは特徴的な眼底の毛細血管の変化を認めることがあります。眼の診察には特別な機器が必要ですが、爪の毛細血管は拡大鏡があれば比較的簡単に確認することが可能です。主な観察項目は毛細血管の「数」「形」「先端の幅」です。膠原病の一つである全身性強皮症では初期では毛細血管が膨らんで出血を伴い、進行するにつれて毛細血管の形が変わりながら数が減っていくため、所見によって病気の進行度を推し量ることができます。毛細血管が脱落して虚血になっている〝late pattern〟では全身性強皮症に合併する肺や心臓の合併症のリスクが高いことも分かっています。膠原病は治療薬の進歩が著しく、早期に発見できれば障害が残る前に病気を落ち着けることも可能です。一人でも多くの患者様のお力になれるよう日々努力を続けてまいります。お困りのことがございましたらご相談ください。
2024年11月26日 苫小牧民報 掲載