過活動ぼうこうについて
佐藤 隆志
(苫小牧市医師会・にっしん泌尿器科クリニック)
佐藤 隆志
(苫小牧市医師会・にっしん泌尿器科クリニック)
過活動ぼうこうは寒さとか水仕事などで急に強い尿意をもよおして慌ててトイレに駆け込んだり、間に合わないで漏れたり、尿の回数が多いなどの症状を起こす病気です。
我が国の40歳以上を対象とした疫学調査では全体の有症状率は12.4%加齢とともに上昇し、50歳代から70歳代では男性が女性よりも高かったとされています。これを2012年の人口構成にあてはめますと、実数は1040万人と推定されますので、いかに多くの方が過活動ぼうこうの症状を有しているかがおわかりいただけると思います。
また、日常生活に及ぼす影響については、少しある以上が約半数、ある程度ある以上が1割でしたが、医療機関への受診は症状のある人の2割程度しかいなく、過活動ぼうこう症状で悩んでいてもまだ医療機関を受診されていない方が多数いることが推察されました。
過活動ぼうこうの発症のメカニズムについては、いまだ十分には解明されていませんが脳や脊髄などの神経疾患が原因と考えられる神経因性とそれ以外の非神経因性に大別されます。高齢男性では前立腺肥大症による下部尿路の閉塞が原因となることが多いのですが、女性の過活動ぼうこうは原因が分からない特発性が大半を占めます。
過活動ぼうこうの診断には自覚症状の問診が重要です。昼間と夜間の排尿回数、急に尿意をもよおす尿意切迫感の有無、トイレまで間に合わずに漏れてしまう切迫性尿失禁の有無を確認します。また、尿路感染症や膀胱がん、尿路結石などがないかを鑑別するために尿検査や超音波検査を行ったり、排尿障害がないかを確認するために残尿を測ったりします。
治療は主に薬物療法が行われます。高齢男性では前立腺肥大症に伴う過活動ぼうこう症状が考えられるため、α1遮断薬やPDE5阻害薬などの前立腺肥大症治療薬がまず初めに使われます。また女性や若い男性にはかつては抗コリン薬が主に使われていましたが、便秘や口内乾燥などの副作用がありました。しかし、最近では、そのような副作用の少ないβ3受容体作動薬が開発され、過活動ぼうこう治療の主流となっています。
このように過活動ぼうこうの治療は進歩していますので、過活動ぼうこう症状で悩まれている方はためらわずに泌尿器科を受診されることをお勧めします。
2024年08月27日 苫小牧民報 掲載