便秘にお悩みの方へ
三好 由里子
(苫小牧市医医師会・三好内科胃腸科クリニック)
三好 由里子
(苫小牧市医医師会・三好内科胃腸科クリニック)
毎日便が出なければ便秘でしょうか?便秘の症状には単に頻度の問題だけでなく、硬さや残便感など様々な症状があります。慢性便秘症のガイドラインでは便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態 」と定義しています。理想的な便の状態は、なめらかで柔らかいソーセージ状です。その様な便であれば、2日に1回しか出ていなくても便秘とは言いません。一方、最近便秘を自覚するようになり「便が細くなった」「赤黒い血が混じっている」等の場合は、大腸癌のサインかもしれません。2年以内に大腸内視鏡検査を受けていない場合は、速やかに消化器内科を受診して下さい。
大腸癌は通常、大腸ポリープというイボの様なできものが何年もかけてゆっくり大きくなった結果です。つまり、定期的に大腸内視鏡検査を受けていれば確実に防げる癌です。過去に1度でもポリープを切除したことがある方は、症状がなくても2-3年に1度は検査を受けましょう。また、親兄弟や祖父母等の近親者に大腸癌やポリープの人がいる場合も、40歳を過ぎたら1度検査を受けてみた方が良いでしょう。
便秘の基本的な対処法としては、1.食物繊維を摂る、2.ヨーグルトを毎日食べる、3.水分を十分に飲む、4.適度な運動、が大切です。この他に、5.お腹のマッサージ(右下から大きく「の」の字を書く様に)、6.起床時まずコップ1杯の水を飲む 等も有効です。
市販薬で対応する場合、まず整腸剤の内服は安全で有効です。それでも改善しない場合は下剤の使用を考慮しますが、下剤には大きく分けて、便を柔らかくする「緩下剤」と腸を刺激する「刺激性下剤」があり、代表的な「緩下剤」である酸化マグネシウムは安価で比較的安全です。但し腎臓の悪い方は飲み過ぎに注意が必要です。一方、センナなどを含む「刺激性下剤」は効果を実感しやすい反面、毎日飲んでしまうと、刺激がなければ腸が動かなくなってしまうため、将来的に便秘を悪化させてしまうリスクのある諸刃の剣です。普段便秘でない人が週1回程度たまに使うのであれば問題ありませんが、毎日飲まないと便が出ない方には不向きです。浣腸も同様です。病院で処方される下剤は近年選択肢が増えており、刺激性下剤や浣腸に頼らずとも、新しい薬や漢方等安全で効果の高いものがいくつもありますので、便秘でお困りの方は消化器内科や胃腸科で相談してみましょう。
2023年06月27日 苫小牧民報 掲載