下肢閉塞性動脈硬化
加藤 伸郎
(苫小牧市医師会・とまこまい心血管クリニック)
加藤 伸郎
(苫小牧市医師会・とまこまい心血管クリニック)
下肢閉塞性動脈硬化症とは、足に栄養を運ぶ血管(動脈)の老化(動脈硬化)により、血管が狭くなったり(狭窄=きょうさく)、詰まったり(閉塞=へいそく)する病気です。血流が悪くなると足に酸素や栄養を十分に送ることができなくなり、さまざまな症状を引き起こします。糖尿病や脂質異常症、高血圧症、喫煙などの生活習慣病を多く合併している人ほど起こりやすく、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など全身の動脈硬化疾患を合併しやすいといわれています。
▽症状
典型的な症状は「間欠性跛行(はこう)」です。歩行していると太ももやふくらはぎが痛くなったり、だるくなったりし、休むと症状が改善し、また歩行できるようになります。この症状は加齢による体力や筋力低下と勘違いされやすいです。以前は休まずに上れた階段や休まずに行くことができたお買い物などに休まないと行けなくなったというようなことがあればこの疾患を疑ってみてください。
病状が進行すると安静時でも足の冷たさや痛みを感じたり、さらに重症化すると足に傷ができたり(潰瘍=かいよう)、傷がなかなか治らなくなったりします。最悪の場合は足先が腐ってしまう(壊疽=えそ)こともあります。
▽検査
簡易的な方法としてはABI検査があります。両手両足の血圧を同時に測定する検査です。
足の血圧と手の血圧の比(ABI値)を測定し、その値が0・9以下の場合、この疾患の可能性が高くなります。このほかエコー検査、造影CT検査、MRI検査などで、どの部位の動脈がどのような状態かをみて、治療方針を決定していきます。
▽治療
症状や病変部位、重症度によって治療法を決定します。
1.薬物療法
血液をサラサラにする抗血小板剤や血流を良くする血管拡張薬を服用します。
2.運動療法
医師や専門の指導士の監視の下で運動をします。しかし、もともと歩行が困難になる疾患のため、現実的にはなかなか難しいのが現状です。
3.血管内治療(カテーテル治療)
カテーテルという細い管を血管内に挿入して、血流を悪くしている原因の動脈を風船で膨らませたり、金網の筒(ステント)を入れて血流を良くしたりする治療です。
4.外科手術
狭窄や閉塞している動脈の末梢(まっしょう)に静脈や人工血管をつないで異なる血液の通り道(バイパス)を作る手術です。
▽最後に
この疾患の認知度は高くなく、加齢による体力や筋力低下が原因と勘違いされがちです。また、その症状から腰や足の病気(整形外科疾患)と勘違いされやすいです。実際に整形外科疾患で同様の症状を来すこともよくありますが、血管の病気も疑ってみることが大事です。
また、この疾患は足だけの病気ではありません。ほかの血管(心臓、脳、腎臓など)にも同様の狭窄や閉塞を認めることが多くあります。この疾患が疑われたら、一度、循環器内科を受診して相談してみましょう!
2022年11月16日 苫小牧民報 掲載