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増え続ける小児の頭痛(その1)  -生活習慣の変化に流れのままだと・・・“スマホ頭痛”-

増え続ける小児の頭痛(その1)  -生活習慣の変化に流れのままだと・・・“スマホ頭痛”-

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

今から18年前、小樽の子ども専門病院から苫小牧の地に着任し、驚いた事の一つが地域では頭痛を訴えて受診する子どもが極めて多いことであった(2013年9月24日“昔の子どもは頭痛がなかった・・・”本紙紙上)。テレビやゲームなど日常生活の中の姿勢の悪さ、運動不足を主な原因とする肩こりからくるもので、それが小学生や中学生からあることにその当時の親も私も驚いた。そして今、利便性の追求から生じた急激な生活の変化に対し、その対応の放置や看過、思考の低下からくる“現象としての小児の頭痛”に直面し愕然とする。

苫小牧で診療を始めた2005年6月からの16年間で、小児の頭痛は4歳児よりみられ、18歳未満までで2,801例、小児神経外科受診者の21.7%を占め、頭部打撲の44.8%に次ぎ2番目に多い割合であった。頭痛が月に15日以上の頻度で生じ3か月以上続く慢性頭痛が多く、その内訳は片頭痛、緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)などの一次性頭痛が2,725例(97.3%)とほとんどで、脳腫瘍、モヤモヤ病、副鼻腔炎などの二次性頭痛は76例(2.7%)しかなかった。このように地域の子どもに多いのは緊張型頭痛で、肩こりや首の痛みなど首こりを主因としたものが多かった。それがここ10数年前からの携帯型ゲーム機やスマホ(スマートフォン)の所持に比例し、急速に新たな形の頭痛が増加している。

今ある頭痛は物が見えづらいなどの前兆や嘔吐などを伴い、医療行為が必要になる片頭痛は少なく、多いのは毎日なんとなく痛い、体調もすぐれない、薬を飲んでも効かない、天気の影響を受けるといった、慢性頭痛が一般的である。この慢性連日性頭痛は10才~14才の小学校高学年から中学生に多く、前記の姿勢などの生活問題に加え家庭の問題、教師を含めた学校内の人間関係、学業の問題など多くのストレスがからみ、更に頚部の筋肉の緊張が高まり、頭や顔に及ぶ神経に影響を与え頭痛となる。そして、最も厄介なのは最近の問題“スマホと頭痛”である。スマホは小さなパソコンであり、SNSだけでなく動画、インターネット、ゲームなど多種多様な情報とコミュニケーション手段が小さな画面につまっている。多くの子ども達がスマホを持ち、立っても、座っても、皆前かがみで見ている状態、“スマホネック”が生じている。北海道でも見られるが、東京などでは電車に乗ったりすれば大人も子どもも皆やや前かがみ、首を前に傾け猫背でスマホに夢中、この奇妙な光景が当たり前である。命の次はスマホ。スマホがあればご飯もいらない、朝から晩まで時間があればスマホの“スマホ中毒”になっている。人間の頸椎(首の骨)は7つの骨で構成され、横からみると頸椎は体の前方に向って緩やかにカーブした後、後方に向ってカーブしている(生理的前弯)が、このスマホ使用時の姿勢になると、頚椎はほぼ真っすぐな“ストレートネック”になり、肩こり、首こり、頭痛、めまい、嘔気を生じるだけでなく、ストレス関連障害、睡眠障害、不登校、うつなど生活の質の低下につながる。

この状況は、タバコが体に悪いと知っているのにその状態を続ける国、地球温暖化に消極的な世界の体制に似ている。使用時間の制限を行うことは当然として、ストレッチ、体操、会話を増やすなど種々の指導と確実な実行が重要である。もはやスマホのない生活に後戻りは出来ないので、このような生活環境を作った大人達は経済や金儲けの反省と共に子どもの健康と成長を見守り、新たなスマホの使い方を子どもの未来の為に早急に提起しなければならない。単純に使わないではなく、どうすれば問題を防げるのかを考えなければならない。この社会問題は大人においても現実で、スマホは頭痛のみならず“大人達の思考停止”の原因になっている。

次回は、 子どもに頭痛があるのは異常なことの認識と生活を含めた今時の子どもの頭痛への対応を報告する。

2022年06月29日 苫小牧民報 掲載

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