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増え続ける大人の発達障害と対応(その2) ―自分を意識し、危機感を持ち、自ら一歩を踏み出す-

増え続ける大人の発達障害と対応(その2) ―自分を意識し、危機感を持ち、自ら一歩を踏み出す-

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

前回の紙上(令和3年10月27日)では、大人の発達障害の概要と一般的対応、方向性について述べた。今回は実際の対応とともに、働くうえで自分の特徴を認識し、危機感を持ち、いかに仕事を継続するかについて述べる。就労は出来るがその継続が難しいのが現実である。

 

就労継続可能であった事例(26歳男性)

幼児期~就学時代:2歳頃より親への後追いがない、夜泣きが多い、視線が合わないなどがあり、読み聞かせの時でもどこかに行ってしまい、座っていられなかった。ひとり遊びが多く、集団行動が出来ない、好きなおもちゃがあればそればかりで人には貸さないなどの行動的特徴もあった。何でも中途半端、集中が出来ず落ち着きが無く、気になることがあれば制止がきかないといった衝動性も強かった。小~中学時代も多動傾向で、着席しても立ち上がるなどがみられ、先生の話を聞かず、注意すると暴れた。何度注意されても忘れ物が多かった。家に帰ると部屋に閉じこもり、言うことを聞かず、部屋の整理はなくマイペースであった。成績は中間位で高校は一般入試で入学、教室で座ってはいるが常に体が動いていた。学校だけでなく家や外出先でも多動は目立った。その後専門学校に進学、落ち着きや注意力のなさは続いたが、学校側の配慮があり卒業できた。

卒業後~就労経過と受診と対応:自動車整備士の資格を生かして就職するも、仕事覚えが悪く1年半で退職した。次の職場でも落ち着きは無く、教えてもらった事を何度も聞き直すなど仕事中のトラブルも多く、周囲と馴染めず、自身も頭痛が激しくなり当院を受診した。大人のスクリーニングテストで注意欠陥多動性障害(ADHD)を認め、早起きをするなど生活リズムを変えるとともに投薬を開始。また、雇用者側の配慮で、事務仕事から工場勤務となり、そこでは仕事内容が自分の好きな自動車や機械関係で、一人で行う仕事が主で比較的自由に出来ることもあり、自分の特徴を意識しながら上手くやれていると感じて、余暇も楽しめるようになった。

今年転勤となって生活に不安を抱いたが、病院の方で縁を切らずに受診の継続が可能になる様配慮してくれた為、精神的に安定している。

就労継続困難であった事例(23歳男性)

幼児期~就学時代:3歳頃より落ち着きのなさがあり、ひとり遊びや勝手な行動が目立った。4歳時に親の離別などがあり、家に遊び相手がいなかった。そのようなことからか口数は少なく、集団行動が苦手、孤立していることが多かった。教わること、考えることが不得手で小学時代は特別支援学級であった。中学は普通学級になったが、勉強意欲が乏しく忘れ物が多かった。普通高校へ入学するも落ち着かず、周囲とのコミュニケーションが成立しない。アルバイトもしたが接客が出来ずトイレに閉じこもることなどがあった。

卒業後~就労経過と受診と対応:専門学校卒業後就職するも仕事に意欲が持てず、注意した上司の態度に納得がいかず自主退職。決められた時間で仕事をすることに耐えられない、仕事の意味がわからない、昼夜逆転して体がついていかない、肉体労働がきつい、自分が周囲と違うと感じるなどが退職の理由であった。夜を主とする自分の生活スタイルへのこだわりがあり、それに合った就職先はなく、アルバイトを転々とした。人間関係が築けない自分に疑問を持ち、精神科を受診。自閉症スペクトラムと言われるも納得できず、当院を受診した。明らかに落ち着きがなく、スクリーニングテストなどでADHDもあると診断し、カウンセリングと投薬を開始した。自分の特徴を評価することの意識は乏しく、他人と関わることを避ける傾向があり、再就労が出来ずひきこもり傾向、在宅ワークもうまくいかず、生活リズムを創りながら要観察となっている。受診は途切れがちである。

〈まとめ〉

大人の発達障害に対しての治療は主として、カウンセリング、コーチング、投薬となるが、その改善には自身の特徴的行動の認識とそれを加味した周囲の状況に合わせる姿勢が重要である。その行動努力により、就労継続可能となる。しかし、多くの場合自らが病気のせいだと思い込み、個性として捉え、トラブルの原因を周囲に責任転嫁し、就労が難しくなる。他の働く場所を探しに行ったり、相談に行くが自己の評価なしに自分のしたいことだけをしようと考えてしまうため、結局は今の暮らしで良い、何とかなると思ってしまうところに問題がある。

一日一日を分析し、どうすべきだったのかを考える時間を創る努力をする。そして、その態度を周囲が認知し、特性としての共通認識を持ちながら協力し、状況を整えることで就労継続が可能になる。それは共生、共存の原則である。

2021年11月17日 苫小牧民報 掲載

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