おねしょは治療できる
高柳 健太
(苫小牧市医師会・たくしん小児科)
高柳 健太
(苫小牧市医師会・たくしん小児科)
誰しも一度はおねしょを経験したことがあるのではないでしょうか。おねしょは医学用語では夜尿と言います。夜尿は、夜眠っている間に作られる尿の量と、その尿をためる膀胱(ぼうこう)の大きさとのバランスが取れていない(尿が多い・膀胱が小さい)ために起こります。
そして「5歳以上のお子さんの月1回以上のおねしょが3カ月以上続くこと」を夜尿症と言います。夜尿症の頻度は6歳児の約10~20%、小学校高学年の5%に起こり、その後徐々に頻度は減っていき成人までにほぼ全例が治癒します。
しかし夜尿症が子供の心に与える影響は大きいのです。例えば、宿泊研修などの学校行事の最中に夜尿をしてしまうと、子供が自信をなくしたり学校生活に問題が生じたりする可能性があります。ある海外データでは、8~16歳の若者において夜尿症がいじめよりも強い精神的外傷をもたらす出来事として報告されています。そのため、夜尿症はできるだけ早く介入することで治癒を早める必要があります。
そもそも夜尿症が治療できる病気であることはあまり知られていないと思います。夜尿の治療には①生活の改善②薬物療法③アラーム療法―の三つがあります。
まず生活を改善することから始めます。早寝早起き・塩分の過剰摂取を控える・夕食後の水分制限から開始します。体を冷やすことで夜尿が悪化しやすいので、冬季は体を冷やさずに布団に入ることが重要なことです。
薬物療法には幾つかの種類がありますが、スタンダードなのは抗利尿ホルモン剤です。膀胱にたまる前の尿の水分を再吸収して尿の量を減らす薬剤です。他には抗コリン薬・漢方薬を使用する場合があります。
アラーム療法という治療もあります。水分に反応するセンサーが付いたアラームを使うことで夜尿が出たことを本人に認識させることを繰り返していくと、次第に膀胱の容量が増えていき、最終的に夜尿をしなくなるという治療です。一定の効果があるため夜尿症のガイドラインでも推奨されている治療法です。
最後になりますが、保護者の皆さんはお子さんが夜尿をしてしまっても決して怒らないようにしてください。怒っても夜尿は改善しません。それどころか症状が悪化する可能性があります。お子さんが夜尿をしてしまっても優しく根気強く見守りましょう。そして、夜尿がなかった日にはお子さんを褒めてあげるようにしましょう。お子さんの夜尿症でお悩みの方はぜひお近くの小児科にご相談ください。
2021年08月25日 苫小牧民報 掲載