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Medical column とまこまい医報

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みんなが幸せになる認知症治療を目指して

みんなが幸せになる認知症治療を目指して

石崎 賢一

(苫小牧市医師会・青 葉 病 院)

鏡に映る自分にあいさつをする義母の姿を見て、うちの娘が泣きながら私のところに走ってきた。これが認知症について真剣に取り組もうと思った最初のエピソードである。そして、私は認知症専門医を取得し、前任地の病院で物忘れ外来を開始した。

患者様が来院されるきっかけはさまざまである。免許の更新で引っ掛かってとか、ご家族が心配してとか、最初はご本人が嫌々連れて来られているのが分かる。「何度も同じことを聞くんです」とか、「物がなくなって私のせいだと責められるんです」とか、ご家族が迷惑エピソードを矢継ぎ早に話すが、認知症は自覚がないのが特徴なので、ご本人はポカーンとして聞いている。

一通り問診を終え、大体どんなタイプの認知症か診断できた時、介護保険を利用しているかを聞くようにしている。概して女性の患者様の場合、ご主人が奥様をかばって、無理をしているケースが多い。介護保険の受給申請を提案するが、まだいいとおっしゃることがほとんどだ。外来通院が続き、ご主人の疲れている姿が目に付いたところで、改めてデイサービスやショートステイの利用を提案してみる。後日、「ショートを利用したら、自分も休めたわ」とお話するご主人の明るく幸せそうな笑顔を見ると、私も一緒にほっとした気分になる。

現在、抗認知症薬は4種類発売されているが、いずれも症状の進行を遅らせる作用しかありません。認知症と付き合っていくしかないのです。「薬を飲むより、デイサービス施設に行ってわいわい楽しんだ方が物忘れは進まないよ」とよく外来で言います。

また、外来診察時に「何か楽しみある?」「幸せかい?」と患者様にお聞きします。すると、「畑仕事が好き」「孫がかわいい」など笑顔で話してくれます。物忘れがあってもご家族ばかりでなく、専門のスタッフや介護制度で助けてあげればいいのです。ご本人が自分らしく楽しく幸せであればいいのです。

そして、ご家族にも笑顔で認知症と向き合ってほしいのです。それを実現するためには介護保険の申請を行い、適切な介護サービスを受けなければなりません。物忘れ外来を受診していただければ、微力ながら、そのお手伝いができる可能性がありますので、ぜひお気軽に受診してください。

「認知症になっても幸せに暮らせる社会をつくりたい」。これが私の願いです。

 

2021年06月30日 苫小牧民報 掲載

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