医師会における学校保健活動
小原 敏生
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
小原 敏生
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
少子高齢化社会、核家族化にともなう地域社会や家族構成の変化、インターネット普及にともなう情報の氾濫、携帯電話の普及による友人関係構築の変化など急速な社会環境の変化を背景に、いじめ、不登校、性の逸脱行動、喫煙や飲酒、薬物乱用、生活習慣病の若年化、アレルギー疾患の増加、児童虐待の問題などが指摘されております。苫小牧市の養護教諭を中心とする学校関係者、苫小牧市医師会・歯科医師会・薬剤師会でつくる苫小牧市学校保健会の研究でも、子どもを取り巻く環境と問題は複雑に絡み合ってこころとからだにさまざまな影響を及ぼしていることが明らかにされております。
昭和33年に学校保健法の制定により公衆衛生の概念が学校教育に導入され、学校保健という用語が用いられるようになりました。学校保健活動は、保健管理と保健教育を2つの大きな領域として整えられてきました。保健管理は児童生徒の健康を良い状態に管理することで、学校薬剤師が環境衛生検査や衛生管理など環境管理に指導・助言を与え、健康管理として学校医と学校歯科医が健康診断を行い事後の指導・助言と健康相談を行います。保健教育は成長する児童生徒が自らの健康を保持するための能力の育成を行うことです。これらを支える組織活動として「学校、家庭及び地域住民の相互の連携協力」の重要性が求められ学校保健委員会の設置が義務付けられております。今日の学校保健や学校安全の課題は多様かつ深刻で、学校保健の強力な推進・整備が必要となり「学校保健法」は改正され平成21年4月1日から「学校保健安全法」として施行されます。①学校設置者に学校保健計画と学校安全計画の策定など責務を明記し、②学校衛生環境の基準を見直すとともに事件・事故に対する安全の確保、③保健教育・保健指導の推進、④地域の医療機関との連携の強化などが挙げられております。また、食育を通じた健康の増進と学校給食の安全確保のために学校給食法も改正されました。
苫小牧市医師会には、学校医という立場で、児童生徒の健康問題が専門化するなか精神科医や産婦人科医などの専門医や地域医療機関との連携を強め保健管理に努めること、養護教諭との連携を密にし健康相談、保健指導、救急処置の啓蒙など保健教育を推進すること、学校保健委員会を通じて家庭・地域住民との連携に努めることなど学校保健活動を積極的に支援していくことが求められています。
2009年03月10日 苫小牧民報 掲載