その腹痛って、我慢していいの?
崎濱 秀康
(苫小牧市医師会・苫小牧日翔病院)
崎濱 秀康
(苫小牧市医師会・苫小牧日翔病院)
コロナ禍の中で、なるべく医療機関を受診したくないと思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか? 病院の方も、患者さんを受け入れ難い場合もあると思います。これは緊急に行うべき手術や処置が、速やかに行われない危険性があることを意味します。
“受診あるある”ですが、「お腹が痛くなったので、近くの病院を受診し、痛み止めを処方された。それで様子をみていたけど、全然良くならない。翌日、他の病院に行ったら、緊急手術って言われたよ!」。初めに受診された病院にご不満をもつパターンもあると思います。ただ、初診を担当された医師のために申しますが、「急性胃腸炎」が最も頻度としては多い中から、手術すべき患者さんを見つけ出すのは、とても大変です。特に、CTや超音波などの医療機器がない場合は尚更です。医療の世界では“後医は名医”といわれます。時間が経つにつれ、症状が明瞭となり、誰でも正確な診断をしやすくなるという意味です(後出しジャンケンと同じ理屈!)。ですから、初診の医師が(たとえ正確な診断をつけられなくとも)何かの異変に気付き、他科にコンサルトできただけでも立派だと思います。
手術する外科医の立場からみて、幾多の疾患を大まかに、①緊急手術が必要な疾患 ②緊急性はないが、いずれ手術になりうる疾患 ③緊急性のない疾患の3つに分けています。生命の危機に直結するという点から、①とそれ以外を迅速に区別することが最も重要です。細かな疾患名は、後からでも構いません。
それでは患者さんの側から見て、初診の医師に「より異変に気付いてもらう」方法はないでしょうか?
私はあると思っています。それは、図に示す6項目をはっきり伝えることです。本来これらは、医師から問診されるべきものですが、仮に尋ねられなくても、積極的に伝えた方がいいと思います。これらだけでも鑑別疾患はかなり絞られるからです。中でも特に大切だと思うのは、痛みの始まり方です。もし発症が急激であれば、上記①に属する疾患(消化管穿孔、腸管壊死、大動脈瘤破裂、心筋梗塞など)を強く疑わなくてはいけません。あともう一つ、きちんと触診してもらうことも重要です。
厳しい世の中ではありますが、お互い身体をケアしつつ、この難局を乗り越えて行きましょう。
2021年01月27日 苫小牧民報 掲載